今回は番外編。今回の手順が番外編の理由は、現在不利とみている下図(その3第1図)に合流する恐れがあるから。
ただそこが解決すれば日の目を見るであろう手順で、また振り飛車穴熊のコツが詰まっているので解説記事を出してみました。
初手から
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △4四歩 ▲2五歩 △3三角
▲4八銀 △3二飛 ▲6八玉 △4二銀 ▲7八玉 △6二玉
▲5六歩 △7二玉 ▲5七銀 △8二玉 ▲7七角 △5四歩
▲8八玉 △5三銀 ▲9八香 △6四銀 ▲6六銀 △9二香
▲9九玉 △9一玉 ▲8八銀 △8二銀 ▲6八角 (第1図)
▲6八角とすぐに引かずに、固めあってから▲6八角とするのが嫌というのはこの記事でお伝えした通り。ただ、今回は早めに角を引いて▲2四歩からの仕掛けを狙うとどうなるのか?というお話。
実はこの形は今から20年近く前にプロの実戦例で指されています。それも羽生–佐藤(康)(2002/12/2、王将戦、敬称略)というゴールデンカード。この将棋の羽生先生の居飛車穴熊の指し回しがあまりにも秀逸すぎるのでまずはこちらを解説をします。佐藤先生は第1図から5二金左~6二金寄と玉を固めていきましたが・・・以下、▲2四歩 △同歩 ▲同角 △2二飛 ▲2五歩 △7一金 ▲6八角(羽生-佐藤(康)途中図1)
居飛車は仕掛けたものの、角を6八に戻しており実質2手損。振り飛車はその2手で金を6二まで移動出来て、手得で作戦勝ちにも見えますが・・・
△2三歩 ▲3五歩 △同歩 ▲3八飛 △2四歩 ▲3五飛 △4二角(羽生-佐藤(康)途中図2)
早めに2筋から仕掛けて飛車を△2二に釘付けにしてから▲3八飛と今度は3筋を狙うのが気付きにくく、また秀逸な構想。最終手△4二角ではなく、△2五歩なら▲2四歩と垂らしておいて飛車でも角でも取れないため振り飛車痺れている。(△2四同飛は▲3三飛成から▲2四角で角損。△2四同角は▲3一飛車成。)
この展開では金が6二まで寄せている功罪で3筋に飛車を成れるのが大きいのです。4二角は苦心の一手ですが振り飛車は進展性がなく、以下は主導権を握った居飛車がコンパクトに囲って快勝。(羽生-佐藤(康)途中図3)
その3でも解説したが引き角からの▲2四歩の仕掛けはどの局面でも有力な手段。相手の金の位置によっては強く捌きに行く手もあるが振り飛車容易ではない。よって▲6八角には△4五歩と角道を開けておく。今度▲2四歩の仕掛けには△4四角とかわす余地があるため大丈夫。
対して居飛車はそれでも早めの仕掛けを狙う▲3六歩と固め合いの▲5九金右の2択がある。順番に見ていこう。
第1図から
△4五歩▲3六歩 △7一金 ▲3七桂 △4二飛 ▲2四歩 △同 歩
▲同 角 △2二飛 ▲2五歩 △4二飛 ▲3三角成 △同 桂
▲2四歩 △1五角(第2図)
▲3七桂と指して△4二飛と途中下車を強要してから仕掛けるのが居飛車の狙い。対して振り飛車は2筋の仕掛けに△4二飛と軽く反撃する。最終手の△1五角が狙いの一手。相手の金が2枚とも離れ駒なので強く迎え撃つ姿勢を見せるのが大切。
第2図から
▲2三歩成 △3七角成 ▲3三と △2八馬
▲4二と △同 金 ▲2二飛 △2九飛 ▲5九金右 △5三金
▲6二角 △6一金 (途中図1)
▲7五桂 △2一歩 ▲3二飛成 △7一桂
▲5三角成 △同 銀 ▲2一龍 △7二角 ▲5五歩 △6二銀(結果図1)
勢いのまま飛車の取り合いから終盤戦へ。何もしないと玉形の分振り飛車が良くなるので▲6二角と強い手段に訴えてきますが、△6一金から△2一歩が上手い凌ぎ。また穴熊において△7二角といった生角を使った受けは守れる箇所が少なく普通は微妙なのだが、この場合は7一桂や5三銀が死角をカバーしているため成立します。
結果図1は5筋を取り込めば△5八歩が厳しい。△7四歩と桂馬を取りに行く手も残っており、少し振り飛車が指せる局面だと思います。
また、▲3六歩には△7一金ではなく、△5一金左と金の連結を高めておく手も有力。
以下、▲3七桂 △4二飛 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 角
△2二飛 ▲2五歩 △6二金左 (途中図2)
▲1六歩 △4四角 ▲4五桂
△3五歩 ▲同 歩 △3六歩 ▲2七飛 △7二金寄 ▲5九金右
△7一金寄 ▲6八金右 △5五歩(結果図2)
▲2五歩 △6二金左とじっと固めるのが面白い一手。▲4五桂には△2四角から△4二飛で4五飛を見せて振り飛車捌け形。角交換から▲4四角にはやはり△1五角と反撃する手がある。
しょうがなく▲1六歩だが、△4四角から△3五歩が面白い反撃。▲2七飛を強要させておいて相手の動きを牽制しながら固めるのが狙いで存分に固めてから△5五歩と突いた形は振り飛車戦える。
まとめると△4五歩に早めの▲3六歩からの仕掛けは振り飛車も反撃して戦えます。2枚の金がくっついていない穴熊は薄く、仕掛け自体は有力でも局面全体でのリードを奪いにくく、得策では無いと思う。
次回は△4五歩に▲5九金右と固めてから仕掛ける変化を解説します。
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