【出来れば辞めた方がいい】オススメしない戦法TOP3

コラム

今回はコラム第2弾。前回とは違い、オススメしない戦法TOP3を紹介してみようと思います。なお、この戦法を指したら即負けというわけではありません。むしろ、短時間の将棋や相手の棋力によっては意表を突くことで勝つ可能性も多々あると思います。

ただ、長期的な目で見れば、意表を突くことより不利になりやすいデメリットのほうが大きいと思うため、出来れば継続して指すことを当ブログではオススメしない、といった趣旨で紹介させていただきます。

ランキングの選考条件は以下の通りです。上から順に損失が大きいと判断します。

  1. 序盤から歩一枚以上の損をしてしまう(駒損)→自身の戦力不足のみならず、敵の戦力増加を招いてしまうため。
  2. 形の悪い駒組みをしてしまう(悪形、形の損)→自陣の不備により仕掛けを誘発したり、形の立て直しを図ると手損を招いてしまうため。
  3. 意味のない手損(手損)→駒組みの立ち遅れによって、相手の条件の良い先攻を許す可能性が高くなるため。特に後手番で2手損以上すると不利になりやすい。(一手損戦法(後手一手損角換わりや角交換振り飛車))はプロレベルでも成立しているため。

以上の「三つの損」を基準に選考しています。

また、あくまで個人の意見ですので一見解としてご参考頂けると幸いです。それでは早速見ていきましょう。

第3位:端角中飛車

飛車角で中央突破を狙う
5三の地点を押しつぶして大成功。

第三位は端角中飛車。この戦法は敵の5三の地点を中飛車と端角で攻め潰すというシンプル且つ破壊力抜群の狙いを秘めており、初心者に大人気の形です。右上の図は居飛車が受け間違えて、中央にと金を作れそうで端角中飛車大成功です。

では、この戦法のどこに問題があるかというと弱点を二つ抱えることになるところです。

浮き飛車を強要してから4四銀と上がる準備をしておく。
枚銀で圧迫されると苦しい。

その二つとは、戦法のトレードマークである端角と中飛車(浮き飛車)です。具体的には右上図のような形に組まれると飛車角を圧迫されて作戦負けになります。

ポイントは

  1. 9四歩と突いて端角を狙って5六飛車と浮き飛車を強要
  2. 浮き飛車と5五歩を狙って二枚の銀を4四と6四に設置

こうすることで敵の狙いを封じつつ、弱点を狙うことが可能です。

ちなみに浮き飛車も端角も狙われないような下図は非常に有力で、相振り飛車などでよく用いられます。このような形であれば、端角+中飛車(浮き飛車)の良さが発揮できると思います。

飛車角が狙われにくく、良さが活きた駒組み。

弱点が露出しており、咎められやすいためオススメしない戦法となっていますが、形や狙い自体は非常に優秀で応用が利くためこの順位にしています。

第2位:穴角

振り飛車型。飛車角交換も辞さない構え
居飛車型。やはり角の働きが悪い。

第二位は穴角。こちらは形の損である悪形に該当するためランクイン。穴角には主に向かい飛車タイプと▲8八銀▲7八金タイプの二つがあるのですが、どちらも▲9八香、▲9九角の形が非常に働きが悪く、まさに悪形の象徴のような構えとなっています。

ただ、攻められやすい角を狙われにくい位置に退避していることもあって、すぐに潰すことは難しいです。しかし、右辺の駒達を活用するには結局▲7六歩と指ささないとダメで、そうなると▲9八香と上がっている手の価値が相当に低く、悪形+手損が大きいと判断してこの順位になりました。

ところで・・・

突然ですが、将棋の初期配置において最も弱い部分はどこでしょうか?

・・・答えは駒の利きがない8七の地点です。5七や4七の地点も同様に利きがないのですが、金銀を配置すれば二枚以上の利きを足して守ることができます。ですが、8七の地点は短手数で守るためには7八金(銀)とするしかありません。

更に、相手から見ると8七の地点を攻めることで将棋の駒で二番目に強い、角を狙うことが出来るため目標にしやすい場所でもあるのです。また、利きがない8九桂を間接的に狙っている点も地味に大きいと思います。

そのため、穴角は悪形ではあるのですが、将棋で最も狙われやすい地点や駒を守るという点においては理屈があるように思います。初期配置における明確な弱点が消えていることが、相手するのに意外と苦労する人がいる理由かもしれません。

嬉野流。7九角は狙われにくい。

ちなみにこの角を狙われにくい位置に置いた駒組みは嬉野流でも活きており、思想自体はかなり有力なのではないでしょうか?

第1位:鬼殺し

鬼殺し。奇襲戦法の代表。

映えある第一位?は鬼殺し。奇襲戦法の王様とも言えるこの戦法が堂々の第一位に。鬼殺しの成功パターンは右下図のように飛車角桂を利用しての7三の地点への集中砲火。こうなればいきなり先手必勝です。

桂と角のコンビネーション
受け間違えると必勝に。

この戦法のオススメしない理由は、正しく受けられると序盤の三つの損のうち最も重い損である駒損、それも歩損ではなく桂損をしてしまう点にあります。

対策としては、▲7七桂に対しては▲6五桂に備えて下図のように△6二銀や△4二玉を早めに上がっておけば相手の仕掛けを封じることが出来ます。こうなると桂損だけが残り、いきなり先手相当不利です。また、7七の地点が薄くなった先手陣は守りの面でも早々に負担を抱えることにもなります。

先に守りを固められると仕掛けは失敗。

ただ実は、6年ほど前の電王戦の企画でSelene対永瀬先生の早指しの練習対局では、Seleneが鬼殺しで勝利しています。(!)

永瀬先生も手堅い駒組みで序盤早々に桂得になったものの、中盤で受け間違え、攻め潰されていました。なので無理な仕掛けといえど、短時間の将棋では負ける可能性もあるので、桂得後も要注意です。

ちなみに鬼殺しは桂馬をすぐに6五に跳ねないようにすればいきなり悪くはなりません。しかし、それだと何故最初に桂馬を跳ねて、角の利きを塞いでしまったの?ってなりますよね(笑)。

ただ、角交換をしてから桂跳ねる手は「7七桂戦法」と呼ばれており、これは有力な作戦です。角交換系の振り飛車と居飛車を両天秤にして指す狙いがあります。また、似たような意味で7七角と上がる、「7七角戦法」もあってこちらも有力です。

7七桂戦法。立石流や菊水矢倉も含みにする。
7七角戦法。向かい飛車や角換わりも視野に。

要するに、仕掛けが成立していない状態で▲6五桂馬と跳ねて、単純な桂損をするのが悪いだけで、7七桂と跳ねるまではあると思います。

ただ、もし7七桂or7七角戦法を採用する際は桂頭の傷を序盤から抱えるリスクについては認識しておく必要があると思います。(桂頭は角頭や飛車のコビンや香歩の裏のように駒の弱点の定番のため。)

その他の戦法について

その他の戦法であまりオススメしないものだと、アヒルやパックマン、筋違い角に嬉野流、袖飛車などでしょうか。ただ、どの戦法も相手をするのは容易ではありません。それなりの狙いを秘めた形なのでちゃんと狙い筋と弱点を把握しておかないと、欠点を突くような駒組みや仕掛けをすることは難しいです。

最後に

以上がオススメしない戦法TOP3でした。

今回紹介した戦法はどれも大きな弱点を抱え、そこを突かれやすいためにオススメしませんが、鋭い狙い筋を秘めています。

過去の将棋史では、奇襲戦法とされていたの早石田が洗練化されて、升田式石田流や新石田流のように新しい形として指されることがありました。ただ悪形とされているから、狙いが単調すぎるからといって反射的に拒絶するのではなく、その戦法の思想を知ることでこれからも新しいアイデアが生まれる・・・かもしれません。

また、現代では将棋ソフトによってその戦法が悪いかは数値化が可能で、誰でもその良し悪しを知ることが出来る時代になっています。

ただ、その形に対してその場で具体的な解決策を出すには、その形の狙いは何か?何故その形が悪いのか?という背景を捉えていないと難しいと思います。もし今より将棋が強くなりたいという方がいたら、その点については頭に入れておくと上達の一助になるかもしれません。

さて、次回は強くなりたい高段者以上へオススメしたい戦法を紹介していこうと思います。

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