大会前
四国予選から四週間後。実はこの二週間前にアマ名人戦の全国大会へ参加していました。結果は無念の予選落ち。この全国にはかなり強い思いで臨んでいたのでかなりショックではありました。
さて、今年も京都へは新幹線で当日入りすることに。二回目ともなると会場への道も慣れたものです。
大会
関西大会の参加人数は96名前後ですが、代表枠が二枠もあります。形式は予選リーグ(2勝通過2敗失格)の後に本戦で、持ち時間は15分切れたら30秒でした。
予選一回戦は関西の方。戦型はこちらの三間飛車穴熊にお相手の天守閣美濃。

上図は▲3八飛に△4二金と上がった局面。△5二金ももちろんありますが、3三の地点を厚くして△4五歩~△3三桂と跳ねやすくしている意味があります。
進んで上図。ここで△7五歩 ▲同 歩 △6四金がこの将棋の流れを形作る動き。玉頭攻めも狙っていますが、真の狙いはこの後に出ます。

中盤の終わり。下図の△4五歩が指したかった一手。取ると△4四歩で銀を取れます。
現代の流行形である4六銀+3七桂型に対して、一歩持って△4五歩は振り飛車からは常に狙いたい手順で、覚えておいて損のない手筋です。

本譜は▲5七銀と引いたのですが、これがかなりまずい手で▲3七銀の辛抱であれば難しかったようです。 ▲5七銀に△3五歩 ▲同 歩 △6四角が気持ちのいい攻め。

以下は7筋で金を交換して、香を取りながら馬を作って勝勢ともいえる形勢に。

終盤戦になって下図。ここで気持ちのいい手順があります。
△4四角と飛車取りに打って、▲3五金に △5五角と出ます。以下、▲7七角 △同角成▲同 玉 △5六歩!。

どう対応しても△4八角が厳しい攻めになり、△5四飛といった手もあるため支えきれません。以下は着実に攻めて勝利となりました。

予選二回戦は関西の方。同じ研究会に参加したことはありますが、対局は初めてです。お相手も四間飛車穴熊を得意としており、興味深いブログも書かれてます。
戦型はこちらの先手三間飛車穴熊の相穴熊。普段は先手では飛車を振ることが少ないのですが、前局で良い振り飛車を指せたので連続での採用となりました。

上図は駒組みが煮詰まって、居飛車から△5五歩と仕掛けた手。一見ただのように見えますが、有力な筋の一つです。
以下、▲6五歩 △4二角を利かしてから、▲5五歩と戻しましたが、△8六歩から飛車交換に。

この局面はこの後の進行を直線で読みやすいこともあって、かなり長考しました。(といっても10分にも満たない程度)

終盤戦に進んで上図。この△5八歩が厳しい手で、この攻めのために仕掛け前に5筋の歩を突き捨てを入れていました。
ここで本譜は▲5六桂と打ったのですがこれが疑問手。
代えて▲2六桂が正着でした。以下、△5九歩成には▲3四桂 △3三角に▲2二桂成 △同 角と剝がしてから▲9一龍とするのが▲3四香などを見せて優勢でした。

本譜の▲5六桂に△5九歩成とされて、▲4四桂 △同 歩に▲4二龍!と切って △同金寄 ▲5三歩成 △同 金に▲9七角と両取りをかけたのですが、 △7八飛と打たれてみると思った以上に成果が出ていませんでした。


劣勢のまま進んだ上図。▲5一飛と金取りにかけたところで、△4九とが自然な好手。以下
▲5三飛成に金を取ってから△6一桂!。

指されたら当然ですが、この手をうっかりしていました(汗)。急所の馬か竜を取られることになりはっきり敗勢に。以下は粘ったものの流石に駒不足は否めずに負け。去年に続いての予選での負けとなりました。
予選三回戦は関西の方。戦型はこちらの後手三間飛車穴熊で相穴熊に。

後手番ながら端の位を取って穴熊に組んでいるのは趣向で、代わりに△6四銀と出るタイミングを保留しているのが工夫です。
この辺りの序盤については、電子書籍で出す予定の三間飛車穴熊の本の第三~四巻で解説したいですね。(果たしていつになることやら・・・)

進んで、本譜は▲5五歩と仕掛けましたが、これがどうだったか。以下自然に対応して△5二飛から△4五歩とした下図は振り飛車捌け形に。


図は△5六歩の垂らしに▲6六銀と打ったところ。
ここで△3九角 ▲3八飛 △6六角成▲同 歩 △5七歩成が相穴熊らしい好手順。

角銀交換ですが、相手の飛車の位置を中途半端な位置へ強要させ、こちらは急所のと金を作っています。一見攻めが細そうですが、露骨な△6七銀や△5五飛、△4六歩~△4二飛と飛車に活を入れる手があり、攻めの厚みを担保されている状態のため優勢です。加えて相手の攻めが角のみといった点も多きく、安い駒で自陣を削られる心配がないのも大きいですね。
以下は相手の攻めをいなしつつ着実に攻めて勝ち。何とか予選突破となりました。
本戦一回戦は関西の方。戦型はこちらの先手三間飛車穴熊。

よくある序盤ですが、ここからのお相手の構想は驚きました。△5三金!▲5七銀 △4四金!

懐かしの棒金戦法かと思いきや、まさかの玉側への繰り出し。初めて見る構想でした。

お互いに駒組みを進めていって上図。△5一金もかなり珍しい手。
ここから▲2六角 △8一飛▲7七桂と兎にも角にも自陣の駒を活用して手順を選びました。戦いが始まれば玉の堅い振り飛車が指せます。


戦いが始まって上図。ここで▲3五歩 △同 金 ▲4四歩!が急所に刺さる攻めで優勢を意識しました。

角で取りたいのですが、▲5四角があるため取れないのです。ただ、放置しても▲4三歩成が金銀の連結を断つ手になり、▲4六銀や▲6五桂もあり居飛車は支えきれない格好。
このまま押し切れると思ったのですが。。。

進んで上図。ここでは▲5二同龍 △同 銀 ▲3五歩が正着でした。以下 △4三玉には▲6六歩と守りに効いている銀に働きかけていけば小駒のみの攻めですが、寄せることが出来ました。
本譜は▲5五竜と引きました。これでも優勢ですが、後手玉もすぐには寄らない形に。


仕切り直しの終盤戦。ここでは秒読みでわからないため、▲3八金打と自陣を補強したのですが、 △4四馬が価値の高い一手で互角に近い形勢に。
ここは▲5三香と放り込んで竜の活用と金銀をはがすことに徹するのが最善でした。


最終盤。こちらの穴熊もすっかり剝がされて風通しの良い?形に。この局面の最善は3二歩成、同玉(同銀は▲3四桂)に▲2六金!らしいのですが、全く見えていなかったです。

本譜は▲5三歩と指したのですが、これは詰めろか怪しいところ。▲5三歩に△2八香成▲同 玉で上図。
2七に金や銀を打ち込む手や△4八馬といった手も厳しいため指運の局面になったと思いました。

本譜は△5三金と手を戻してくれたため、▲9二龍 △5二金 を利かしてから▲2六角と攻防に角を設置して少し安心する形に。

最後は詰めろがかからなくなったところで▲5四銀と手堅く詰めろをかけて、ようやく勝ちを確信出来、勝利となりました。薄氷の勝利で運にも助けられた一局でした。
本戦二回戦は関西の方。戦型はこちらの後手三間飛車穴熊で相穴熊。

上図の三間飛車側の駒組みは趣向。この辺りの苦心や工夫もいずれ電子書籍で出す予定の三間飛車穴熊の本の第三~四巻で解説したいですね。(2回目)

お互いに銀冠穴熊へ組み替えた上図。ここで△6五歩の仕掛けを嫌って▲2四歩と突いて仕掛けてきましたが、これはどうだったか。▲3七桂や▲4六角のような待ち方のほうが難しいでしょう。

相手の手に乗って、捌きあって終盤へ。ここで△2五桂とそっぽに跳ねるのが読みの入った好手。先手の▲1七角の覗きをけん制しつつ、△2七歩の角取りを狙っています。
本譜は▲1七桂にやはり△2七歩ではっきり優勢になりました。

どうやらこの手をお相手はうっかりされていたようです。ただ、代わる手も難しかったように思えます。以下は駒得が大きく、そのままリードを保っての勝利。
本戦ベスト8は関西の方。戦型はお相手の先手中飛車にこちらの居飛車。ここまで5局連続で三間飛車穴熊を指していましたが、初手5六歩で中飛車を明示してきたので居飛車をすることに。

序盤の岐路。本譜は△3二銀と左美濃に組みましたが、△3二金も十分あるところでした。

こちらは中盤の入り口、作戦の岐路。悩んだ末に△5四歩と収めましたが、これはやや気合負け。△6五桂や銀、△5七歩を含みに△9四歩と待つ手が最善だったと思います。

戦いが始まって上図。▲4二歩は軽妙な手で、と金を作らせないように△同金引と取らせることで▲4五金と出る手を効果的にしています。
ただ、中央の勢力はほぼ互角で、二枚美濃対三枚の銀冠、桂馬の働きの差などを加味して形勢自体は少しこちらが指せそうだと思っていました。

図の▲4三歩も悩ましい歩。本譜は△5三金とかわしましたが、これはやや疑問。正着は△同金直でした。
以下、▲4四歩 △5三金に ▲5四金が嫌で読みを打ち切ったのですが、そこから△同 金 ▲4三歩成△4四歩! ▲3三と △同 桂。

途中の△4四歩が冷静な受けで、こう進むと角金交換ながら陣形があまり乱されずに中央の勢力も保っており、指せていました。
具体的には△7六歩や△6五桂、△5六歩、場合によっては△9五歩もあります。

本譜は陣形を乱れた隙を見てどんどん攻められていきます。図の▲5四金も鋭い攻め。△同 金と素直理に取ると、 ▲4二飛成 △同 角 ▲7五銀。

これは大技が決まって、自陣のまとまりがよくないため自信のない展開です。

辛抱を重ねていった終盤戦。
ここで△3二金打!が自分らしい受けの手。厳密には正着ではないと思います。ただ、金銀の連結の良い囲いを再生する手は悪手にもなりにくいです。

なおも攻められ続けて上図。ここからの手順がこの将棋で一番印象に残っています。
△8七角! ▲7七飛 △5四角成! ▲7三角成 △4六歩!

△8七角から5四へ馬を作って、△4四金を助けます。そして△4六歩が玉頭攻めを狙った好手です。▲7三角成と桂損をしてしまいますが、本来、この桂馬は飛車で取りたかった駒。こう進んでみると7筋の飛車、銀、馬がダブった印象を受けます。
実はこの馬作りの筋は、過去に古い本で読んだ米長-大内(1994-12-12 NHK杯)の手順を頭に思い浮かべて指していました。随分前に何度も並べた棋譜ですが、こうして秒読みの実戦で活かすことが出来たのは感慨深いです。
余談ですが、対抗形における「厚み」を学びたい方には米長先生の将棋は非常にお勧めで、「米長の将棋シリーズ」に書かれている内容は現代でも通じる名著なので、是非買って棋譜並べしてみてください。私は完全版の第一巻の対抗形編を買って、未だに何度も並べなおしています。
また、同じように対振りの将棋を上手くなりたい方は中原-大山戦を並べるといいと思います。中原先生の振り飛車に対する急戦、持久戦問わずに指し回しの洗練さ、居飛車側の初期値のリードの広げ方と保ち方は今見ても色褪せておらず、時代を超えて現代の藤井七冠に似たものを感じます。大山VS中原全局集もおすすめですね。

さて、脱線してしまいました。
話を戻していよいよ最終盤。ここで△2六歩が決め手。傷が大きすぎて支えきれません。この局面でも△5四の馬が攻守に素晴らしい働きをしていることがわかると思います。
秒読みの中、攻め続けられて苦労の多い将棋でしたが、自分らしい受けで勝ち切れて大きな自信に繋がりました。
本戦ベスト4は関東の方。去年のアマ王将北陸、山陽でも当たっています。
戦型はこちらの後手三間飛車に5七銀左急戦。お相手の方は手厚い受けの棋風でイメージ的には銀冠や玉頭位取りを指しそうなのですが、対振りには急戦からジワジワと良くしていく将棋が多く、その指し方はまさに達人といった印象です。

上図の▲3五歩は早い印象ですが、このタイミングで突くことで、4六に進める駒を銀か歩にするかをこちらの形を見て決めようと意味合いがあります。

△4五歩から捌きに行って角交換になった形。ここで△同 桂と取ったのですがこれが疑問手らしく△同飛が優ったようです。

本譜は△同桂に▲2八飛と回られてこちらの桂馬がつんのめった形になり、対応が難しく、長考することに。ちなみに▲2八飛に代えて▲8八角も非常に有力なようでした。

苦心の手順が続いた上図。ここは馬を無条件に作られて既に不利な形勢。
ここから△7二銀? ▲3二歩 △5五歩▲同 歩 △2五桂? ▲4七馬 △5五角 ▲1八飛。

△7二銀と美濃に形を戻しましたがコビン攻めに弱いのでまだしも△7二金だったか。△2五桂も一瞬気持ちのいい桂跳ねでしたが、▲1八飛まで進んでみるとこちらの歩が全く前に進んでおらず腰の入った攻めとは言い難いです。
実戦はこの後桂馬も取られてより形勢を悪化することに。「桂の高跳び歩の餌食」の典型的な格好に。

終盤戦。図の▲9五歩は厳しすぎる攻め。持ち駒に複数枚の歩と銀や桂を持っている場合の端攻めは粘りにくく、好手になりやすいです。

ここで▲4七馬が銀取りを受けつつコビンを狙った決め手。陣形が乱れすぎており流石に粘りようがありません。実戦もこの後幾ばくも無くして投了。
これでまたしてもベスト4で負け。
お相手の方とは全てアマ王将で対戦しているのですが、これで私から見て1勝3敗1千日手。ちなみに負けた3局は全てベスト4で当たったもの。勝った1局も苦し紛れの逆転勝ちで、私にとってアマ王将代表獲得の大きな壁になっているのは間違いないです。
対戦に備えて対振り急戦の研究も事前にしてきたものの、中々結果に結びつけるのは難しいですね。
大会後
去年観光を楽しんだので、今年は日帰りで帰ることに。また行きたいところが出来たら観光もしたいですね。
今回の戦績
ベスト4
北海道編へ続く
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