アマ王将巡り2024⑥ 11/4 近畿編 その2

大会

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前回の記事からの続き。

本戦3回戦は関東の方。過去に全国アマ王将位を獲得されている強豪で、私は過去2戦当たっていずれも負け。居飛車党で中盤の構想力が凄く、観戦していると前後の文脈が分かりにくい独特な形になっていることが多い印象です。

戦型はこちらの後手で相掛かり。過去2戦はこちらが三間飛車穴熊を指したのですが、いずれも大差での負けだったので違う戦型を選ぶことに。

相掛かりは公式戦では指す頻度が少ないですが、練習将棋ではかなり指しています。細かい駒組みが好きな私には性に合っているようで、特に後手だと密かに得意にしている裏芸の一つです。

先手の9手目▲9六歩に△5二玉と上がって進んだ序盤戦。△6四歩と△9四歩を省略して中央に手をかけるのが好きな形。

この局面は▲7七角や単に▲2二角成 △同 銀 ▲8八銀もありますが、本譜はメジャーな▲5六銀でした。

図は▲5六銀に8筋交換をした手に角交換から▲8八銀と上がった局面。ここは△8一飛と直ぐに引きたいですが、▲7五歩△6三銀に▲1八角のような攻めを警戒して先に△6三銀と上がりました。

以下▲8七銀から銀冠に組まれますが、こちらも△2四歩から銀冠を作ることに。

△2三歩~△2四歩と手損をしていますが、先手も角交換で一手損をしているので、手の損得は相殺されており、対して後手はダイレクトに△8一に飛車を引けていることが主張です。

駒組みが進んだ上図。ここは駒組みの岐路で、銀冠の形と1筋の位を活かして△4二玉 ▲3七桂 △5四銀 ▲4七金 △4四歩と左側に囲えばやや作戦勝ちでした。

こう進むと先後共に同じような陣形ですが、1筋の位が大きいです。また、△4二玉とすることで囲いの一部としてより活きている印象です。

本譜は△5四歩から中住まいを活かす形を取ったのですが、結果的には中央で戦いが起きた時に玉が近く損な形に。とはいえ、左側に囲いすぎて逆に戦場に近づいて攻め潰されることもあるので、この辺りが相居飛車の駒組みの難しいところですね。

進んで8筋で桂交換を狙った局面。ここで一本△5五歩(取ると△8五飛の十字飛車)と位を取りに行ったのですが、▲6七銀と引かれてみるとやや損な格好に。先手玉が堅くなったのに対して、支えづらい5筋の位は負担になりがちな印象です。

現在、△7五歩~△7四歩と継ぎ歩をしたところ。ここは先手の攻め方が問われるところで、▲6五歩とコビンを狙って突く手が優りました。以下、 △7五歩 ▲6六銀 △6五歩 ▲5五銀 △5四歩 ▲6四歩。

先手の囲いも薄くなり、△6六桂のような傷も出来ていますが、この場合は中央の薄い後手の方が受けるのに苦労が要りそうな展開です。先手の攻め駒は豊富で、こうなると銀冠の形と1筋の位が全く活きていないのも痛いです。

実戦は△7四歩に▲3五歩と攻めてこられてやはり苦労の多い展開に。

図は▲3六桂と打たれたところ。実はこの手をうっかりしていました。(汗)先手玉は非常に堅く、一方的に攻められそうでかなりまずい展開にしてしまったと思いました。

この辺りで先に秒読みにも入ったのですが、ここで△4三金 ▲4四桂 △4二玉 ▲3二角 △1四角!が咄嗟に捻りだした受け。

銀に紐をつけながら、△4七歩と飛車先を止める手も見せている含みの多い受けの手。△4二玉のところは△5三玉!という手が最善だったようで、この△1四角自体も最善手ではなかったようですが、それに近い手だったみたいです。あまり見慣れない受けのため、お相手の方も軽視されていたようでした。

耐え忍ぶ時間が続いて、今△3五歩と中合いの歩を打ったところ。これが疑問手で単に△3四歩と低く受けるほうが難しかったです。ここで▲同 飛 △3四歩 ▲4三角成 △同 玉 ▲5五飛と中央に展開される手が生じてしまい、まだまだ大変な展開に。

少し進んだ局面。ここでは▲8五飛とぶつける手が好手でした。後手玉は不安定すぎるので飛車交換は出来ず、△8四銀と受けますが、▲4五飛と逃げる手が幸便です。

次に▲5五桂の攻めやと金を払って受ける手も残り、こうなると△8四銀は少し重たい駒になっています。

本譜は▲8五飛ではなく、▲5六桂として4四の桂に紐をつけてきたのですが、これが一手の価値が低く、敗着になってしまいました。

以下 △5八と ▲6七金直に△5七ととと金を捨てるのが好手で、 ▲同 金 △7七銀 ▲同 金 △同歩成 ▲同 玉 △6九角成で一気に勝勢に。

こう進むと先手玉は一気に危ない状態。また、「桂頭の玉寄せにくし」で後手玉は妙に寄らず、△1五の位も脱走ルートとして機能しています。

最終盤。ここで△8七銀!が冴えた好手で決め手に。▲同金は△7九飛成なので取らずに▲5四歩としたいのですが、以下 △7八銀成 ▲同 玉 △6九馬 ▲8九玉 △8六飛!で以下貰った歩を活かしてピッタリ詰んでいます。

改めて今見ても、30秒の秒読みの中でこの手順を読めていたのは我ながらよく見えてたなと思います。実戦は△8七銀に▲6七角でしたが △5五銀と外して勝ちに。

強豪相手に序盤から難解な将棋でしたが、△1四角や△8七銀のような読みの入った手を指して勝てたことは大いに自信になりました。

ベスト8は関西の方。元奨励会三段の方ですが、最近大会に復帰された方。

若くして三段に上がったものの事情により退会されており、タイトル戦の記録係で対局者の読めていない複雑な詰みを発見するなど逸話の多い方。いつか指してみたいと思っていたので当たれてとても嬉しかったです。

棋風は観戦してたところだと、居飛車党で本筋に明るい手厚い将棋だと思いました。イメージとしては羽生世代の方の相矢倉がピッタリ合う感じです。

さて、対局前にお相手の方と少しお話したところ、なんと

「ブログのアマ王将の記事読ませていただいてます」

とお声がけいただけました。

知り合い以外でブログを読んでいる方に実際に遭遇したのは初めてでとても嬉しかったのですが、びっくりしてしまい、思わず動揺してしまったまま対局に臨むことに。自分もまだまだ未熟だなと思いました(笑)

もし大会などで初めてお会いする方で、対局する際に同じようにお声がけいただくと同じように動揺させた状態で対局が始まると思いますので、良ければ試してみてください(?)。

さて、戦型はこちらの後手三間飛車で相穴熊に。折角なので自分の最も得意な形でぶつかりたくて選びました。

序盤の駒組み。ここで▲2六飛は少し珍しい手で代えて▲8六角や▲6八角が多数派です。

少し進んだ局面。ここで無難な△2二飛を指すか悩んだ末に、欲張って△8四歩と銀冠穴熊を目指したのですが危険な一手でした。

この形の相穴熊は仕掛けの権利が常に居飛車側にあるので、居飛車が銀冠穴熊を目指した手に合わせてこちらも△8四歩と歩調を合わせて組み替えるのが正しい駒組みです。

この辺り、対局前の動揺が影響していたかどうかは定かではないですが(?)、浮ついた一手だったのは間違いありません。

本譜はこちらが銀冠穴熊に組み替える前に飛車交換の仕掛けをされることに。こうなると△8四歩はただの傷になっており、やや苦しい将棋に。

図は香車を取られるのを避けて▲1七香とされた局面。ソフト曰く最善は△6二角!▲5二馬に△4五歩らしいのですが、かなり指しにくい手順です。

本譜はかなり考えて、苦し紛れに△9五歩 ▲同 歩 △8五桂と端攻めを敢行したのですが、流石に無理だったようで、ここからはっきり不利な形勢に。

少し進んだ局面。ここでは▲9六香と端を補強しつつ逆襲するのが好手でした。確かにこれだと△1七桂成がかなりぬるくなってまずそうです。

本譜は▲8六歩の催促だったため、△9七歩 ▲同 桂 △同桂成 ▲同 香に△8五歩と進みました。

▲同歩には△8六桂が狙いで、こうなるとまだまだ悪いながらも居飛車の玉も薄い格好で勝負形に。

今、狙いの△8六桂を打った局面。対局中はこれで受けなしではと思っていたのですが、▲8九玉が唯一の受けで好手でした。

危険地帯の端からの脱出も目指しており、依然として先手のリードは残っています。

△1七桂成と攻め駒を補充した局面。ここはじっと▲8四歩!と打つのが妙手でした。一見非常にぬるい手に見えますが、次の▲8三桂の打ち込み以上の手がないのを見切っています。

実戦は自然な直接手で迫る▲8三歩でしたが、△8四香が嫌味な食い下がり。

▲8四同香 △同 角となれば次に△6六角が必殺の一手になります。

さらに進んだ局面。角を逃げずに△8三香がしぶとい手。自玉の堅さを保ちながら攻めを狙った攻防手で、まだ形勢は先手有利ですが、実戦的には逆転の雰囲気が漂ってきました。

遂に先手に痛いミスが出て逆転した局面。ここは△8六歩が唯一の正着でした。

▲同 玉にそこで△8三香と打ち、▲8五歩 △同 香 ▲同 玉に△7七銀!が退路封鎖の好手。以下▲8六銀 △7九龍!(取ると△8四歩以下長手数の詰み)▲7七銀上 △9四香。

こうなれば受けなしで後手勝ちです。

本譜は△8六歩と悩んだ末に△8三香と打ったのですが、これが負けていたら敗着になっていた一手。以下▲8六歩と受けるのが最善で、 △同 香 ▲同 玉 △8五歩に取らずに▲7七玉と引くことが出来ます。

これは先手玉に迫る手がなく、後手玉は一手一手のため負けでした。

本譜は△8三香に▲8四歩だったので、△8六歩と打てるようになり再び後手勝ちに。以下 ▲同 玉 △8四香 ▲8五歩に△9四香と外して、 ▲8四歩 △8五歩 ▲同 玉にやはり△7七銀の退路封鎖が決め手に。

ここから▲8三桂に△9二玉と逃げておき、

最後は△9二玉と上がったのを活かして△7三桂と跳ねて以下即詰みに。かなり苦しい将棋で終盤も難解でしたが、強豪相手に逆転のアヤを求めて勝負手を指し続けて勝利できて感無量でした。

ベスト4は関東の方。実は昨日の山陽大会で当たって負けた方。まさかの二日連続の対局でお相手の方も流石に少し驚いていました。

戦型はこちらの後手雁木対お相手の右四間飛車。昨日三間飛車穴熊で完敗だったので、もう一つの得意戦法の雁木で戦うことに。

序盤の駒組みで△7三桂と跳ねたところ。何気ない局面ですが、次に△8一飛と引けると後手陣は隙が無くなり、先手は仕掛けるのが容易では無くなります。

よって▲7五歩 △同 歩 ▲4五歩と仕掛けて来られました。

本譜は悩んだ末に▲7四歩を嫌って△8四飛と浮いたのですが、これが効果の薄い手でした。

代えて△7六歩▲6六角 △4五歩 ▲同 桂 △6六角 ▲同 歩 △4四銀右 ▲7四歩に△3七角と打つのがこの戦型でよく出る形で良い受け方。

以下は▲7三歩成 △同角成 ▲4九飛 △8一飛と引いておくのがやはり自陣の隙を無くす好手。

この局面は桂損ですが、先手の歩切れが痛くこれ以上の攻めが望めなく、後手よしでした。

例えば、強引に▲6五桂と打ってきても以下△6四馬 ▲5三桂右成 △同 銀 ▲同桂成 △同 馬で銀桂交換ながら馬が守りに抜群の働きをしています。

何もしないと次に△8六歩から△7四や7五桂、場合によっては△8六桂と直接打つ手もあるかもしれません。

受ける展開が続く中盤戦。ここは素直に△4五同銀がよかったです。

以下▲同 桂には△8六歩 ▲同 歩 △8七歩と嫌味をつけることで攻め合いを目指します。

この展開は常に△6六角と角を捌きながら玉の逃げ道を広げる手が残っているのも非常に大きく、こう指しておけばやや後手有利でした。

本譜は▲4五銀に対して、攻めを受け止めようとして△5五歩としたのですが、以下 ▲4四銀 △同 銀に▲8三銀が異筋の銀でしたが好手でした。

この手は見えていたのですが、少し違和感があるため軽視していたのですが・・・

以下△5四飛 ▲7四歩 △6五桂 ▲7三歩成と進んでみると誤算に気づきました。

次に▲7四銀不成が▲6五銀や▲6三とを狙って非常に早い攻め。

対して後手は角道が二重に止まっており壁角のせいで強い攻めが出来ないのです。

なので、ここは苦しいながらも△1三角 ▲2五桂 △2四角 ▲8八玉 △2二玉と懸念の角を移動させながら玉を逃がすのが粘りのある手順でした。

▲1五歩の利かしや▲7四とと手厚くと金を引く手などもあり、苦しいですが直ぐには倒れない玉形なのが大きく、簡単ではなかったと思います。

本譜は▲7三歩成に△8六歩にそれでも▲7四銀不成が証文の出し遅れを咎める一手でより苦しい形勢に。

少しでも攻めを見せるべく△8八歩と叩いた手に▲同 玉と取った局面。ここが最後のチャンスでした。

△8七歩と更に叩き、▲9八玉に△5六歩 ▲同 歩 △同 飛と飛車を捌き、▲6三と △4二金右 ▲5七歩に△3六飛と逃げておくのが勝負の順。

これなら△8七歩の利かしが大きく、場合によっては△9五歩を絡めて△8八金からの頓死筋を狙うこともできたので先手としても嫌だったと思います。

本譜は▲8八同玉に対して△5七桂成と攻めたのですが以下▲同 角 △5六歩 ▲7五角 △5三銀に▲7七歩と冷静に受けられ、△6四銀に▲6三銀不成が決め手に。

こちらの玉は飛車か金を取られると一手詰みの形のため粘りようがありません。以下数手で投了。終始、壁角が祟った無念の一局でした。

その後お相手の方は決勝戦も勝ち最後の代表に。決勝戦の将棋はハードな叩き合いを制して勝たれていました。

ちなみにお相手とは今年のアマ王将を含めてこれで私の0勝3敗。

とても温和な雰囲気で感想戦でも話しやすいお方なのですが、棋風は受けを攻防手のみで済ませて後はひたすら攻め重視の凄まじい攻め将棋という印象。なので受けの棋風の私とは読み筋が全く合わず、いつも困っています(苦笑)。

実力差はもちろん、相性の悪さを特に感じますが、次当たるときは何とかして勝ちたいですね。

大会後

やはり今年もベスト4の壁を越えることは出来なかったですが、参加人数の多い都市部の予選で強豪との連戦で競り勝ったり、逆転勝ちを出来たのは大きな自信になりました。

今回の成績

ベスト4(3回目)

総括に続く。

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