大会
本戦の参加者は、昨日の札幌予選を勝ち上がった8名と道内の各地区予選を勝ち上がった23名に加えて前年度の北海道大会代表1名の合計32名。形式はトーナメントで、持ち時間は(たしか)20~30分切れたら30秒でした。
1回戦のお相手は北海道の方。
戦型はお相手の初手▲6六歩!からの矢倉対こちらの左美濃急戦。

図は先手が▲4六銀と出たところ。狙いは5筋の位を取ることです。
ここは左美濃側に有力策が何通りかあり、一つは位を取られるのを甘受して銀矢倉+三手角を目指す持久戦の駒組み。

図は一例ですが、こうなると後手陣のほうがコンパクトで堅いうえに、角成を含みに△6五歩からシンプルに攻めたり、△9五歩と端を絡めていく、または5筋の歩を交換したり△6三金と上がって攻めの厚みを加えるなど、後手に有力な手が多く作戦勝ちです。

また、▲5八飛と回らせてから△4四歩~△4三銀引として、左美濃のままで5筋の歩を交換したり、△6三金と上がってから仕掛けるのも有力です。図からは△5七歩の叩きや△4五歩と角を活用する手などもありこれも後手ペースの将棋です。
矢倉側の作戦はネット将棋ではかなり指す人が多い印象で、恐らく相手の銀を追い返して中央の位を取る手順の気持ちよさと金矢倉+▲5五歩▲5六銀の手厚く見えるのが支持者が多い理由だと思います。
ただ、現実的には位を取る手数が掛かりすぎている点と、左美濃側の囲いの発展性と攻め形のバリエーションの多さなど柔軟性が高いため、囲っている途中の中途半端な矢倉囲いに攻めが刺さっていくことが多く、矢倉側の勝率は低い認識です。
美しい囲いにはロマンがありますが、低い陣形からの攻めの技術が大幅に向上した現代将棋においては手数をかけて、攻められ続ける砂のお城を作るよりも、手軽な武器を持っての攻撃が優るのは仕方ないのかもしれません。
序中盤で美しい囲いや陣形を作るのが好きな私としては、将棋が敵玉を取るのが目的の攻撃性の高いゲームじゃなくて、その過程にある囲いの美しさや作戦勝ちなどを加味してくれた芸術点などで審査してもらって、その結果判定勝ちとかあればなと常々思ってしまいます(汗)

さて、実戦に話を戻すと、▲4六銀には△7三桂 ▲5八飛 △4四歩 ▲5五歩 △4五歩 ▲5四歩 △4六歩 ▲5三歩成 △同 金 ▲4六歩 △5二飛と進めました。
▲5五歩に△4五歩と激しく攻め合うのが妥協のない最善の手順。歩損になりますが、早期に戦いを起こすことで角と玉の位置が悪い先手の形を咎めようとしています。

中央での反撃を狙った△5二飛には、▲5四歩から△6三金に▲5三銀と露骨に攻める手が気になります。
ただ、以下△同 金 ▲同歩成 △同 飛 ▲5四歩 △5一飛 ▲6二金に△4七銀と反撃するのが厳しいです。これは玉の形が相対的に見て薄い先手が不利な攻め合いです。

お互いに玉の位置を整備して上図。チャンスと見て△8五歩と継ぎ歩をしましたが、これがどうだったか。じっと△1四歩と玉の逃げ道と広げつつ、角の活用を図ったり、△4二飛と逆サイドからの攻めが本筋だったかもしれません。
本譜は△8五歩に▲同 歩 △同 飛 ▲8七歩に△5五飛とぶつけていきましたが、以下▲同 飛 △同 角 ▲6一飛と進むと読んでるうちに意外に難しいことに気づきました。

予定では△3九飛 ▲5九歩 △5八歩が相当受けにくいと思っていたのですが、そこで▲6五歩が絶好手。

△8八角成に▲同玉が壁角を捌きつつの玉の早逃げになってしまい、これは一気に先手勝勢に近い展開になってしまいます。
対局中、お相手の雰囲気的に何かを狙っているような気がしたので、ここでじっと冷静に腰を落として読みを入れられたのは良かったです。
よって、本譜は予定変更で▲6一飛には△5八銀 ▲7七角 △8五桂とじっくり攻めることに。

明確な攻め手がない難解な終盤戦。△5六歩は▲5六香を嫌った手。
ここで▲5八歩と打たれましたが、これは主張が通り、大きく得をして優勢に。
ここは▲5九香と、なおも香車を打つしかなかったようで、以下△6五金!に▲5八銀打 △6六金 ▲6九銀 △6七金 ▲7七銀と頑強に受けるのが最善だったようです。

こうなるとこちらは金銀を打って攻めていくよりないですが、相手の金銀で受けることによって千日手になる変化が多い展開になるようでした。

▲9三竜と遠巻きな攻めを狙った局面。ここで△7七桂打!が厳しい攻め。▲同金は△6八金 ▲7八金 △同金 ▲同銀 △6六角の王手飛車。△7七桂打に▲7九香の受けも△8九桂成から△7七桂打で持ち駒に金を持っていない先手は受けづらい格好です。

実戦は△7七桂打に▲同 角 △同桂成 ▲同 玉と上部へ逃げ出そうとしましたが、△8九龍ではっきり勝勢になりました。▲5三龍には△9五角で詰んでしまいます。

駒得を活かしながら丁寧に攻めていき、最後はここで△6四馬が決め手に。以下▲同 歩 △9四龍 ▲7三玉 △6一桂で龍が取れる格好になり勝負あり。
難解な将棋でしたが、大きなミスをすることなく勝ち切れてよかったです。
2回戦のお相手は北海道の方。戦型はお相手の先手中飛車。

向かい飛車に振り直して飛車先交換をしてきた局面。ここで駒組みの牽制のために△2四角と上がったのですがこれがやや危険な一手でした。ここは自然な△3二銀か仕掛けを警戒して△9四歩が普通でした。

△2四角に対して▲5四歩 △同 歩 ▲7五歩の仕掛けられて嫌な格好に。△8四飛と受けたのですがそこで、▲9五角 △9四飛 ▲6八角とぶつけるのが面白い捌き。

△4二角と引くのが無難そうに見えますが、そこで▲8三歩の垂らしが好手。以下△8四飛には▲7四歩から▲8二歩成で不利。とはいえ、角交換に応じると離れ駒が多い後手は苦労しそうで大変そうな将棋でした。
実戦は△8四飛に単に▲7四歩 △同 飛 ▲7五歩でしたが、△8四飛として居飛車が得した格好に。

少し進んで上図。ここで△9五飛 ▲同 歩 △7六歩ならわかりやすく有利でした。以下、▲8五桂に △8七歩と叩いて ▲同 飛 △6九角 ▲8八飛 △8五桂。

桂得から駒得をどんどん拡大出来そうで、これなら先手も困っていたと思います。
本譜は先に△7六歩と打って、▲8五桂に△6五桂と手筋の跳ね違いをしたのですが、そこで ▲5三歩 がどう応じても味の悪い手。以下△4二金寄としましたが、▲7三桂成 △7七歩成に金を見捨てて▲8二飛成とするのが好手で難しい将棋に。

こう進むと▲5三歩の利かしは非常に大きく、また龍の力が強く、金を見捨てても十分お釣りが返ってきそうです。

本譜はここで働きの悪い飛車を捌くために△9五飛と角を取りましたがこれが悪手だったよう。ここで▲6三成桂なら振り飛車有利の終盤戦でした。
以下、△5三銀の辛抱にそこで▲9五歩と飛車を取り返し、△7八と ▲8一飛 △5七桂不成 ▲3九金と逃げておきます。

これは振り飛車玉が堅く、次に▲5三成桂が非常に厳しいため苦しかったです。

本譜は△9五飛に素直に▲同 歩だったため、△7三銀と急所の成桂を外すことが出来、▲9一龍に△7八とと金を取る手が間に合ってはっきり優勢になりました。

優勢な終盤戦。ここで図の△1五歩が急所の一手。同歩は△1六桂打ちですし、何もしなくても△1六桂があります。よって▲6三角成と攻め合いにきますが、 △6二歩が冷静な受け。以下は駒得を活かしての勝利になりました。
ベスト8のお相手は北海道の方。生粋の振り飛車党という印象で、私とは世代が近く、過去に将棋合宿で練習将棋を指したことがあります。
戦型はお相手の後手ゴキゲン中飛車にこちらの超速。

図の△4五歩は銀バサミを狙ったこの戦型の手筋。
ここは悔しいですが、▲5七銀と大人しく引く手も有力なようでした。

以下、△5四銀 ▲9八香に△5五角が嫌な飛び出しですが、▲1八飛と冷静に引いておいて、△4三金▲9九玉 △6四歩 ▲8八銀 △3三角 ▲5六歩として、居飛車も指せる駒組みでした。
振り飛車の角は△5五~△3三で二手損なのに対して、こちらの飛車は場合によっては▲1八~4八のように活用して手得しながら仕掛けられる可能性もあるため、手数的にも不満のない展開です。
本譜は△4五歩に▲同銀と取り、△4二角と銀バサミを狙った手に対して、▲5五歩 △同 飛 ▲5六銀と銀を助けながらの展開に。

図は▲3七桂と跳ねたところ。▲6六金や▲5八飛では△4三金から△5四歩と活用されるのを嫌い、悩んだ末に指したのですが、これは疑問手でした。というのもここでは△5五銀が成立していました。

△5五銀には▲同 銀 △同 飛に▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛!が読み筋の候補でしたが、以下△同 角 ▲5五角に△7九角成 ▲同 金 △5八飛で敗勢です。
ただ、本譜はお相手も悩んだ末に、▲3七桂には△4三金と自重してきました。
上の手順にある△5五同飛の局面自体は、他にもこちらに手段があるため互角に近いですが、危険と判断したのかもしれません。

図の▲7五歩は本局で一番印象に残っている手。飛車切りからの▲4六角、▲7七桂と力を溜める手、他には▲7四歩からの継ぎ歩を見せて、歩を使った攻めに制約を与えています。
最善手ではなかったようですが、人間らしいはっきりとした狙いや意志を持った手だったかなと思います。

捩じり合いが続いた中盤戦。ここで▲5四歩は▲7五歩から連なった構想でコビン攻めを狙っています。ただ、どうやら疑問手だったようで、ここで△3五歩と歩を渡さない対応があったようです。
以下、▲4四歩 △同 金 ▲2四飛 △同 歩 ▲4二角 △5四飛 ▲3三角成 △4八飛。

振り飛車は桂損はしたものの、△5四飛の働きが縦横に利いて素晴らしく、最終手の△4八飛も非常に受けにくい手で居飛車不利。とはいえ△3五歩に対してはこの変化に進む以外なさそうなので困っていました。

少し進んだ局面。ここで▲3五角打が読み筋の攻防手。狭い角ですが好手だったようで、お相手はこの手を軽視していたよう。ここから有利な展開に。▲3五角によってこちらの攻めの生命線の▲4六角の利きをキープすることによって▲7四歩を残しつつ、▲3三歩成が間に合うようになりました。

図の▲7四歩が決め手。△同銀は▲6四角の王手飛車。

実戦は△3五飛と角を取ってきましたが、▲7三歩成と銀を取ってから▲3五角と飛車を取り返し、 △5五角に▲6六銀と手厚く受けて勝勢に。以下はゆっくりとした攻めが間に合って勝ちに。
ベスト4のお相手は北海道の方。自分と同学年の元奨励会有段者の方です。
仲の良い友人数名でつくったライングループに一緒に入っており、練習将棋では毎度熱戦になるものの一回も勝てたことがない強敵です。いつか公式戦でも指したいと思っていたのですが、いざ大事な場所で当たると喜ぶだけではいられませんね。
さて、戦型はこちらの先手三間飛車にお相手の天守閣美濃+△6四銀△7三桂。お相手は驚異的に粘り強い棋風で、中飛車や雁木、独特な四間飛車が得意なイメージ。
本局は▲7六歩に△8四歩と振り飛車を指すのを譲ってきたので、こちらも十八番の三間飛車をぶつけることにしました。

序盤の駒組み。▲4七金左を保留しているのが工夫で、▲7九飛~▲4九飛のような含みもあります。
本譜はここから▲4八金左 △9四歩 ▲1八香ともう一つの含みである銀冠穴熊を目指しました。

居飛車も銀冠への組み換えを目指した局面。ここから▲5八銀 △3二金 ▲4七銀と更に固めたのですが、打開を目指す先手番としては仕掛けづらい将棋になってしまいました。
ここは▲5七角 △8一飛に▲8八飛として、以下は▲7七桂と活用するのがさながら角落ち下手の三間飛車のような手順。以下は角を好位置に移動させて下図のような形を目指すのが最有力でした。

ここから▲6五歩と仕掛けていき、△同 桂 ▲同 桂 △同 銀に▲5七桂と打てば五分以上の展開で打開に成功しています。

ただ、基本的に後手番で飛車を振ることが多いため、こういった打開の経験がなく、対局中は思いつかなかったです。

待機策を取る後手と打開を目指す先手。ここで▲9七桂は決断の一手。ただ、やはり▲5八銀から組み直して前述の打開を取るのが優りました。

千日手を受け入れようか悩んでいた際にフラッと▲4九飛と指してしまったのですが、これが疑問手。すかさず △7五歩と仕掛けられて困ることに。△7四飛や一歩持って△9五歩から桂馬を取りに行く狙いなど後手は手に困らない展開に。

▲3五歩は苦心の攻めですが、△6六銀と出られて中々形勢が楽になりません。

辛抱しながらの駒運びをしていて、チャンスが来たのは上図。ここで▲6七歩として、△同銀不成に
▲5五角と角を捌くことが出来ました。しかし、その瞬間に△4七歩が悩ましい一着。

▲同飛は△5六銀成で微妙。かと言って▲同金や銀では攻めの効率が悪くなります。
本譜は▲9一角成としましたが、△5八銀不成が更に悩ましい一着。

ここでこちらが間違えてしまいます。手が見えず、迷った末に▲4七飛と駒損覚悟で捌いたのですが、△同銀成 ▲同 銀 △7三歩が受けの好手。

こう進むと▲9一の馬はほぼ無力で、働きを得るにも手数を要する形です。形勢の針は再び居飛車に触れることに。

△5八銀不成には▲3九飛と逃げて△8四角に▲3七馬が見えていなかった好手。ピッタリ△4八歩成を受けつつ、「馬は自陣に」の格言通り、馬が絶大な働きをしています。
以下は △5七角成に▲8六歩 △7七桂成と飛車先を重くしておき、▲4六香のような手を狙っておけば有利な展開でした。

何とか攻めを作ろうともがいていましたが、ここで△3七歩が激痛。どう応じても自玉が弱体化してしまいます。本譜は▲同金右としましたが、△4五桂が絶好手で、形勢の差は広がるばかりに。

金銀の打ち合いでの千日手を狙っていた局面。ここはまだしも▲4五銀として△同金に▲3六銀左が勝負の順でした。

以下、△同金から△4九飛のような手で冷静に見ればまだまだかなり悪いですが、自玉もすぐには寄らず、▲3四歩や桂を狙って嫌味を残せていました。
本譜は単に▲3六金と逃げたのですが△3七歩と追撃されていよいよ囲いが崩れていきました。

最終盤。▲3四歩は形作りの手で、ここは△2八飛成 ▲同 玉 △3八金と打てばわかりやすく詰んでいました。

3六の地点に銀の利きが無くなると△3六桂で詰み。▲同銀左△同歩成に▲同玉は△4七銀から△3五桂。▲同銀右△同歩成に△2七銀から△3五桂でやはり詰みです。
ところが本譜は、▲3四歩に△同 飛と受け、以下▲同 馬 △2八飛成 ▲同 玉 △3四銀と進みました。

飛車二枚と角と桂と豊富な持ち駒があり、どこかで▲3七桂が詰めろ逃れの詰めろになりそうな形。これはチャンス到来と思い、前のめりで考えたのですが・・・
実戦は▲6六角と攻防の角を打ち、△5五歩に▲5二飛の合い駒請求に△1三玉と逃げて、▲3七桂と歩を払いながら▲2五桂打の筋を見せたのですが、△3六歩が自玉の不詰めを見切った決め手。以下、▲3三飛に△2三金と受けられて攻めが途切れて負けに。

感想戦で△3四銀の局面を検討したのですが勝ちは見つからず。局後にソフトで解析しても居飛車がはきり残していたようでした。
前述の通り、お相手との対局は練習でもいつも熱戦になるのですが、どれも冷静に見たら余されている将棋ばかりで、この辺りの玉の耐久力に力の差をいつも感じています。
ちなみに大会は、このお相手がそのまま決勝も勝ち、優勝。
負けたものの、強敵に熱戦で自分の力を出せたのはよかったですが、終盤の▲3七馬の自陣への馬引きが見えてなかったことだけが後悔ですね。
大会後
大会後は、優勝者と数名で札幌時計台の近くにあるお寿司屋さんへ。ここの系列のお店は本当に美味しくて、北海道を訪れたときはほぼ毎回来ています。
さて、この翌日以降も地元へ帰らずに更に旅行を楽しんだのですが・・・こちらも物凄い話が長くなるので割愛します。
ちなみに、2024年の12月にも北海道最強戦へ参加しました。冬夜の北海道大学の構内を散歩して見事に風邪引いたのも今となっては良い思い出です。
北海道へはそれを含めて人生で7回訪れたのですが、いつも違う気付きを得られるのでいつも新鮮な気持ちで楽しんでいます。またいつか行きたいですね。



今回の戦績
ベスト4(今年2回目)
北東北編へ続く
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