いつもなら大会前の様子から書き始めるのですが、この大会は観光や将棋以外の部分もとても楽しんだので、そちらの様子も別記事で出そうと思います。今回は大会の将棋を紹介します。
大会
南東北大会の参加人数は64名前後。予選(2勝2敗失格)の後に本戦で持ち時間はなんと10-30!
まるで高校竜王戦のような持ち時間でとても驚いたのですが、地元の方によるとこの大会は以前は2日制でしてたようで短縮して一日にしたためこのようなタイトな持ち時間になったとのこと。
とはいえ、切れ負けとは違うハードな戦いが予想されてかなり緊張しました。
予選一回戦は東北の方。
戦型は相手の四間飛車穴熊に居飛車穴熊へ。
相手の方が後手番ながら早い仕掛けをしてきたのですが、やや無理筋で優勢のまま迎えた終盤。
ここで▲6二歩の垂らしが手堅い一手。△5七金と張り付いてきたのですが以下▲6一歩成の剥がしが早く 即詰みに。幸先の良いスタートを切れました。
予選二回戦も東北の方
お相手の四間飛車に居飛車穴熊へ。
こちらも早い仕掛けをされたのですが、やや無理筋なのを咎めて優勢な局面。
ここで▲7三金 △6一玉▲6三歩と上部を押さえるのが手堅い一手。
以下は△7三金 ▲同歩成 △5二玉と脱走を図りましたが、と金と馬を作っておけば問題ありません。
ここで▲5三金と打ったのが決め手で角道を塞いでしまえば怖いところはありません。以下は勝ちに。
二連勝で予選突破することが出来ました。
さて、お昼も終わり本戦。
本戦一回戦は東北の方。大学将棋でもよく見た名前なので歳が近いことは知っていましたが、全くの同い年ということが判明してびっくりしました。
戦型はお相手の四間飛車ミレニアムにこちらは居飛車穴熊。
ここからの駒の繰り替えは居飛車穴熊を指す方には参考になると思います。
▲3八飛 △4四角 ▲5九角 △8二銀 ▲4八角
△8三銀 ▲6八銀 △8二玉 ▲7九銀右
まず一歩交換を狙って▲3八飛と寄って△4四角を上がらせて4筋の仕掛けを封じます。そこから▲5九角と引いて、今度は6筋の仕掛けを防ぐために▲4八に角を上がります。そして▲6八銀~▲7九銀右と松尾流穴熊に組みながら角を攻めにも受けにも使いやすい、5七の好位置に持っていきました。実戦はそれが実現して作戦勝ちに。
とはいえ、そこからが将棋の難しいところで実戦は攻め間違えてしまい、難しい局面に。
ここでお相手の△4五銀が敗着に。△9二玉と辛抱されたらわかりませんでした。
▲6三歩成 △同金直 ▲7三角成が穴熊らしい強襲。▲6五桂や▲3一角の筋で攻めが続きます。本譜も▲5三銀まで進み優勢に。
優勢になった終盤。ここで端玉には端歩で▲9五歩が筋の一手。更に▲5一龍で金を狙い△8二銀と使わせて、 ▲8六桂が決め手。駒を使ってしまったので次の▲7四桂が受かりません。以下は攻め合ってきましたが、穴熊が深く攻め合い勝ちに。
何とか攻めを続けて勝ち切れてとても嬉しい一局でした。
二回戦は関西の方。
大学将棋時代からの知り合いで、よく大会で話すのですが、実は一度も将棋を指したことはないと言う不思議な間柄。
実は先週の関西予選の際に。「天童に来ませんか?笑」と冗談で話したら本当に来られててびっくりしました。
戦型はお相手の四間飛車穴熊にこちらの居飛車穴熊。
なんとこれで4連続で四間飛車対居飛車穴熊に。
早めに△4五歩から角交換をする形になり駒組みが進んでいって下図。千日手模様になっていたのですが、▲4八角が決断の打開。狙いは▲6八銀から▲7七銀、▲5七角の好形を築くこと。前譜同様に6八や5七の角は居飛車穴熊における好位置です。
それを嫌って△2五桂と桂ポンをしてきましたが、ここで▲2六角が好手。角交換をすれば▲4四角の傷や桂馬取りが残っていて、振り飛車は収拾がつきません。
優勢のまま進んだ終盤戦。ここで▲6九金が決め手。攻め手には困らないのでしっかり守っておくのが大事です。ただ、ソフトで検討したところ▲9九玉!として▲8八金打とするほうが更に優るらしくなるほどなと感心しました。
本譜は以下は地道に攻めて勝ち。ずっと指したかった相手にいい将棋で勝つことが出来て嬉しかったです。
三回戦は東北の方。
戦型はこちらの三間飛車穴熊にお相手の居飛車穴熊。
△2四角と上がった局面ですが、ここで▲6五歩が△5七角成から△6七銀を防ぎつつ、機敏な仕掛けで有利に。以下△同 歩 ▲7四歩として△同 歩なら▲4六銀が絶好。本譜は△同 飛でしたが▲6一飛の先着が銀の立ち遅れを咎めてはっきり良し。
その後一瞬互角に戻してしまいましたがここで▲5九金が決め手。
以下△6七龍 ▲4九金 △4七龍 ▲3八金とすれば鉄壁の再構築が完了しました。以下は確実な攻めを間に合わせて勝ちに。
穴熊、特に相穴熊では攻めが担保されている場合は、相手より固い形でZを保つことの価値が非常に高いです。これはそうすることで速度計算で絶対負けなくなるので相対的に攻めやすくなり攻め合いが望めるからです。穴熊戦で自陣に金銀を打つ手が悪手になりにくいのはこれが理由だと思います。
さて、いよいよ本戦ベスト4。今回のアマ王将巡り4回目のベスト4。お相手は関東の方。
戦型はこちらの三間飛車穴熊にお相手の左銀急戦。後手三間飛車美濃には有力な形ですが、端に争点があるとはいえ、今回はこちらが先手で穴熊に組めているのでかなり得をしていると思いました。
△5五歩~△6五歩から定番の仕掛けをしてきて進んで下図。ここで▲3六歩が穴熊の形を活かした一手でリードを奪いました。8~6筋の攻めをいなして手薄な玉頭を狙いにいくのが厳しくなっています。
少し進んで、ここで▲3八飛としたのが逸機で▲3四歩なら勝勢でした。
以下、△6六歩 ▲5六金 △6七歩成 ▲5五金 △同 角
▲4六銀 △7七角成 ▲3八飛とすれば▲5五歩やシンプルな▲3三銀の打ち込みが非常に厳しくはっきりよかったです。
本譜のように先に飛車を回ると同じように進めたとき、▲5五金の瞬間に△5三と金とされる手が少し気になります。
終盤戦。▲3三桂と打ち込んだのがはっきり悪手で、△3八香成と飛車を取られて不利になりました。ここは▲3七桂と受けておけばまだ難しかったです。
最終盤戦。お相手が詰みを逃して危険な変化に踏み込んだ局面。何かあると思ったのですが30秒では読み切れず、本譜は▲3三銀成としたのですが足りずに負け。
…予感通り、この局面は▲2四桂とすれば詰んでいました。詰みを逃して負けることはあまりなく、悔しかったのですが、手数は少し長く、やや難しい詰み筋だったので実力不足でした。
普段ならここで終わりなのですがこの大会は三位決定戦があるとのこと。代表には関係ありませんが一つでも順位を上げて次につなげたいところ。
お相手は東北の方。
戦型はこちらの三間飛車穴熊にお相手の居飛車穴熊。
これで4連続で四間飛車対居飛車穴熊の後に3連続で三間飛車穴熊というすごい偏りに。
こちらの△6四銀に対して相手の▲6六歩型の居飛車穴熊はかなり優秀な対策。
ここで△5三銀と引いたのが一応の工夫。
この手を端的に説明すると▲6五歩と突いて銀を圧迫するのを事前に避けて△6四歩と突いて駒組みを続けたいという意味です。ただ、本来△7三に引きたいところを2手損して駒を後ろに戻しており、それでもすぐに▲6五歩と突く手が有力なのを見るとかなり不自然で苦し紛れな対策だと感じています。ただ、6五歩を突くと直ぐに△6四歩と反発されて一回のミスで居飛車も互角に持っていかれる恐れがあるので人間同士では実戦的にはある指し方だと思っています。
駒組みが進んで下図。ここでは▲2六角の筋(角を切って▲4三金の狙い)や▲2四歩、▲1五歩を絡めて仕掛けられたら悪かったようです。
更に進んだこの局面でも▲7一角成!、同飛車(同金は▲3二金)、4五桂ではっきり悪かったらしく、少し見えにくい仕掛けではありましたが、このあたりは最終戦で大会の疲れもあり、細かい部分でミスを重ねており、序盤の組み立てが上手く出来ていなかったです。
本譜はお互いにそのあたりは通り過ぎて互角の中盤へと突入。
▲3三とと寄ったところですが、△6五歩がと金を作る攻めを見せつつ、と金を寄せてくる手に対して△6四銀と逃がす手を見せた味のいい手でここからリードを奪うことに。
その後相手の端攻めの勝負手にややミスを重ねましたが依然として優勢な局面。ここで予定では△5八歩と打つ予定だったのですが、二歩だということに直前で気づき、慌てて△9八金と予定変更。明らかに損な手だったのですが、ここから予定外の形となりミスが続くことになりました。
進んだこの局面、詰めろが受からず絶体絶命に見えますが、△8四銀!と歩の頭に銀を捨てる手がとっさに見えてなんとか残していると思っていた、実際に残していたのですが・・・
ここが運命の分かれ道。△9三同銀から△9五桂ならはっきり勝ちでした。本譜は△9五銀 ▲6三桂と進み、その局面で相手に詰みがあると錯覚をしており、後戻りができなくなってしまい負けに。
序盤にも課題が残り、悔しい逆転負けになりました。
今回の戦績
ベスト4、4位(今年4回目)
東海編へ続く
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