大会前
山陽予選の翌日。加古川へ向かいました。会場に早く着いたので、荷物の運搬や机、椅子、盤駒の準備を手伝うことに。
アマ大会は運営してくださっている方々のご厚意のおかげで成り立っていることが多いので、余裕がある場合はなるべく手伝うことを心掛けています。
今は選手として専念したいので先の話ですが、もう少し年を重ねたら大会運営側に回って貢献することも考えたいところ。
さて、会場はやはり今年最後の予選ということで強豪が勢揃い。前日の山陽大会に参加されていた方も沢山来ていました。
大会
近畿大会の参加人数は100名前後。形式は予選(1勝通過2敗失格)の後に本戦で、持ち時間は15分切れたら30秒でした。去年は35分切れ負けだったので持ち時間に大きな変更があった形になっています。
予選は関西の方。戦型はこちらの後手三間飛車石田流にお相手の棒金。

少し変わった出だしの序盤だったため、こちらは石田流にストレートに組めています。
図は△4三金と上がったところ。「金には金」で△3二飛から△3四金と棒金に対抗する形を取るつもりでいたのですが、これが実は疑問手だったようで、何はともあれ先に△3二飛と引く必要がありました。
ここで▲2六金 △3二飛 ▲2四歩 △同 歩 ▲1五金という攻めがありました。

普通は△4五歩で捌けるものですが、以下素直に▲同歩と取られて△7七角成に▲7七角型を活かして▲同桂と味よく取られてみると、こちらの金銀の形が重たく捌くことが意外と難しいです。
本来、石田流は先手で指す戦法なのでこの辺りの▲7七角の有無などの一手の差をあまり意識できていませんでした。朝一番で経験値の薄い形に飛び込むのはやはりリスクですね。
本譜は△4三金に自然な▲3六歩 △同 歩 ▲同 金という展開に。

今、居飛車が2筋の突き捨てを入れたところ。本譜はここで▲2五歩の継ぎ歩でしたが、△4五歩に備えてじっと▲5六銀や▲7九金と手を渡されても自信がなかったです。

▲2五歩に△同 歩 ▲同 金と進んだ局面。ここは初志貫徹で△4五歩と捌く一手でした。
以下、▲1五金に△7七角成 ▲同 桂に △1四歩が強手。

▲2四金には△4六歩から△2七歩が嫌味。▲2一飛成には△3一飛とぶつけて捌けます。△1四歩に代えて無難に△2二歩▲2三歩△3三銀も有力で、とにかく△4五歩の一手でした。

実戦は▲2五同金に欲張って、△3六歩と利かそうとしたために、▲3四歩 △4五歩に▲3五金と寄られてしまい、 △7七角成 ▲同 桂 △2二歩。
▲3五金が3~4筋の攻防に働いており、明らかに抑え込まれてしまいました。

前図の△2二歩に対して▲4五歩とした局面。この手が失着で、代えて▲3六銀なら抑え込まれていたと思います。この局面の最善は△6四角 ▲4六角 △同 角 ▲同 銀 △6四角 ▲3六金 △3四金という手順。

▲3五歩には△同金もありますし、確かにこっちのほうが丁寧な指し方という印象です。
本譜は▲4五歩に対して△3七角!と強引に打ち込みました。
評価値としては先手良しのようですが、むしろ後手の指し手がわかりやすくなり、実戦的には振り飛車ペースになりました。

先手に更に失着が出て、はっきり優勢になった局面。ここで△9四香! ▲6六角 △8四銀
▲8六歩に△7四桂が厳しい反撃。

△9四香は危険に見える受けですが、相手に持ち駒がない+一手渡しても有効な攻めがない場合は好手になりやすい受け方。
△8四銀と手堅く受けてから▲8六歩に△7四桂が角取りと△8六桂を狙って絶好の一着に。

最終盤。銀取りを放置して△9七歩成が決め手。以下▲4二龍に△8六桂(取ると詰み)▲7九玉 △8五銀。

急所の桂を取って勝負あり。この将棋は朝一番ということもあって序中盤で細かいミスが多かったですが、自玉側ではなく、飛車側でのミスということもあり大きな被害がなかったことも幸いでした。
本戦1回戦は関西の方。同学年で元奨励会の方。同じ研究会にも所属しており、練習将棋での成績はこちらの0勝2敗。手強い相手です。
戦型はこちらの後手三間飛車に急戦。

▲6八金上と金無双の形に囲うのは現代的。▲5七銀左よりも囲いの堅さがあります。
「現代将棋には現代将棋」ということで(?)ここでこちらは△6三銀と上がりました。
△6三金の高美濃より金が二段目にいるほうが囲いと陣形のバランスが良いというのが現代振り飛車の感覚。

更に駒組みが進んだ局面。こちらの銀が6三に行ったことで端が薄くなっているため、居飛車は場合によっては地下鉄飛車を狙っています。
ここで△6五歩と位を取り、▲4八角 △6四銀 ▲7七銀 △6三金 ▲8六歩に△7二飛がこちらの狙いの構想。

この手をしたいがために△7二金を出来る限り保留していたのです。
次に7五歩が厄介なため、▲8七玉とするよりないですが、ここで少しペースを握れたと思いました。
発展性が多く、形を立て直しやすい振り飛車に対して、陣形全体のバランス、特に囲いの金銀の連結が良くない居飛車との差が理由です。
ちなみに、振り飛車が袖飛車に振り直して居飛車の陣形を歪ませてから持久戦での作戦勝ちを狙う手法は大山先生の棋譜に非常に多く、この将棋も大山康晴全集で並べた数多の棋譜を意識しながら駒組みを進めていました。

陣形をまとめつつ、5筋の歩交換をして作戦勝ちになった局面。ここで△4五歩が厳しい手。▲同歩には△4六歩から△5五歩があります。
よって本譜は▲同 桂でしたが、△4四歩で桂得が確定してはっきり優勢になりました。

△5四銀△6四銀の中央の二枚銀が手厚いため、こうなってしまうと単純な桂得以上の差があります。

終盤戦。ここで△4九飛が自然な手で激痛。以下▲5八銀に△8九飛成と囲いを崩し勝勢になりました。

最終盤。ここで△9五桂! ▲同 歩 △9六銀! ▲同 玉 △9五歩 ▲8七玉 △9七金!が気持ちのいい捨て駒三連発。

▲同 玉 △9六歩以下即詰み。強敵相手に振り飛車の良い将棋で指せて大きな自信になりました。
本戦2回戦は関西の方。戦型はこちらの後手三間飛車に飯島流引き角。

図は相穴熊に発展した形。
飯島流引き角に対してはいろんな対策がありますが、速攻を仕掛けづらい後手番の場合は、振り飛車は穴熊に囲うのが有力で、金銀の枚数が同等でも密度の差による堅さの差で振り飛車が作戦勝ちになりやすいです。
藤井(猛)-羽生(2006/04/19、朝日オープン)はそのお手本になる振り飛車穴熊の素晴らしい名局なので是非並べて見てください。
さて、話を実戦に戻すと▲2六飛に対して、△4四角 ▲2八飛 △2二飛 ▲1六歩 △3三桂で振り飛車の作戦勝ちに。

▲2六飛には△5五歩も有力だったようですが、△4三歩型を活かして△4四角と上がり、△3三桂と桂を活用するのが自然な駒組み。遊び駒を働かせる手に悪手は少ないです。

図は満を持して△5五歩と仕掛けた局面。本譜は△5二飛と軽い捌きを狙ったのですが、どうやら少し軽すぎたようで、代わりに△5五同銀から△5六歩と抑えるのが本手のようでした。

実戦は△5二飛に▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛と相手の飛車にも捌かれて思ったより成果が上がっていない形に。ここで△5六歩は苦心の手でしたが、ここで▲2三飛成 △5五角(△4五桂は△4三龍で失敗) ▲4六歩なら互角のようでした。

実戦は△5六歩に▲3七桂 △5五角 ▲4六歩という進行だったため、△3五歩が厳しい攻めでここから形勢有利に。▲4七金は金が離れてしまいますし、▲3四飛には△3六歩 ▲同飛 △2二飛の捌きがあります。

辛抱の桂を打たれた局面。ここで△3七歩成 ▲同 歩 △3八歩が丁寧なと金攻め。▲2九飛には最後の一歩を使った△2八歩で決まります。

今、▲5一飛と打たれた局面。ここでは△5四飛!という自陣飛車の好手があり、それならもっと明快に勝ちでした。

本譜はノータイムで△6四銀と上がったため、▲6六歩 △同 角 ▲5六飛成と自陣竜での粘りを受けることに。こうなると角を逃げた後に▲5七桂や▲6六歩のような手が生じて△3九とが一気にぬるい印象を受けます。

長引くものの優勢を保てた終盤戦。ここで角取りを放置して△6九とが大きな一手ではっきり勝勢に。▲7三角成と剝がされてもまだ金銀三枚ある振り飛車穴熊は非常に心強いです。

▲6六龍とした局面。ここで金をとらずに△8七桂成が決め手。以下▲同 金に△7八銀で受けがない格好に。以下は数手で勝ちとなりました。細かいミスもありましたが、振り飛車穴熊らしい手を選び続けて勝ててよかったです。
近畿編その2へ続く
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