大会前
南東北予選から一週間後。今回の東海は名古屋が会場。新幹線で当日入りすることに。
アマ王将巡り後半のこの辺りになると心身に異変が生じていました。前回の4度目のベスト4敗退で今年は代表は無理だろうという諦めの気持ちが出ており、勝てないのに時間とお金をかけて長距離を移動することがしんどくなっていました。完全に感覚としては苦行をしている修行僧の気分でした(汗)
また、週末のみのイベントではありますが、毎週早朝から長時間、長距離移動して長時間将棋を指して深夜遅くに家に着くというのは自分の想像以上に体力を削っていき、体への負担が意外に大きかったです。比べるのも烏滸がましいかもしれませんが、タイトなスケジュールでタイトル戦で各地を回っているトップ棋士の方は凄いなと身をもって痛感しました。
ただ、もし代表を取れなくても苦しい中でやりきることができれば成長することができるような気がしたので最後まで頑張ろうと思っていました。
大会
東海大会の参加人数は80名前後。予選リーグ(2勝通過2敗失格)の後に本戦で、持ち時間は予選が25切れ、本選が30切れでした。
自分の予選リーグを見ると大会内でも一番平均レベルが高そうなところに入っており、まず予選突破できるかが心配になりました。
予選一回戦は関東の方。
戦型はお相手の角交換四間飛車。
序盤で馬を作らせてしまうミスが出てしまい、下図。
本譜は▲7一馬 △8三飛 ▲6一馬 △8二飛以下千日手に。形勢が悪い中での千日手で驚いたのですが歩切れで振り飛車の玉頭の歩もないため、打開手段も簡単ではなかったという判断なのかもしれません。ただ、今見ても▲3六歩から角を圧迫されるような手ならかなり苦しそうです。
指し直し局も戦型はお相手の角交換四間飛車に。私は先手をもらったものの、切れ負けで時間がないので居飛車穴熊に潜って攻める展開を選択。
中盤戦。ここは▲4七歩 △3六馬に飛車を切って、▲3一角 △3二飛に▲5三角成!から成桂を作っておけば優勢だったようです。3枚の攻めでかなり攻めが細いですが、相手の飛車銀の働きが悪く、穴熊らしい手順でした。
本譜は正確に指されたら難しかったですが、時間切迫でお相手にもミスが出て、飛車の成りこみに成功してはっきり優勢に。
下図の▲9三香が銀冠相手に稀に出る手筋。手駒によっては△9二香車!?のような不思議な手で受かる場合もあるのですが、角を手持ちで銀が質駒の本譜の場合は厳しそうです。
少し進んだ局面。ここでは▲5九歩と固めてから▲8六歩と攻め駒を責めるのが最善でした。
本譜は焦って▲5二銀?と攻めたため、△5三馬、▲5一飛成、△9五歩と急所の端を攻められてしまい不利になります。
こう進むと▲5二銀は相手の急所の守備駒を剝がすどころか銀を渡す損が大きいですし、▲5一飛成も△5三馬の交換とは明らかに損になっています。
しかしそこからも簡単ではなく再び優勢になった下図。
ここは怖いですが▲9三金、△7三玉、▲7一角成で勝ちでした。
本譜は怖がってしまい、▲9三歩成 △同 玉 ▲8五桂と桂馬を外しに行ったのですが敵玉を広くし、こちらの玉も危険になってしまいました。
下図でもまだ▲7一角成のほうがよかったかもしれませんが、先ほど踏み込めなかった流れがあったので指しづらかったです。
本譜は▲同 香 △同 銀 ▲9八香 △9六歩と手筋の中合いの歩で悪くなりました。
お互いに時間切迫のまま迎えた最終盤。
ここで大チャンスが来ていました。後手玉は広そうですが、なんと詰んでいます。7手詰め。初手が分かれば簡単だと思います。
本譜は時間に追われて受けに回って負けに。熱戦でしたが、優勢な時間が長かったので悔しい負けでした。
予選二回戦は東海の方。負けたら予選敗退の一戦、過去に一般全国で戦ったこともある相手で強敵です。
戦型はこちらの先手三間飛車にお相手の右四間飛車。
今、△5四角と打たれた局面。ここで▲6四歩が味のいい一手でリードを奪いました。取ると王手飛車ですが、取らないと▲6六銀が受かりません。
進んだこの局面。▲3六角が事実上の決め手になりました。△7二金にはシンプルに角切りからと金をつくっても、▲6六銀や▲1五歩などもあって収拾がつきません。
以下は短手数で勝利。崖っぷちの対局でしたが強敵に快勝出来て希望が繋がりました。
予選三回戦は東海の方。少し年は離れていますが、同郷で同じ将棋教室に通っていた方でもあります。
戦型はお相手の先手中飛車に後手超速。
5筋の位を奪還した中盤戦。本譜は▲9五歩~▲7五歩から仕掛けてきたのですがこちらの厚みが活きる格好でやや無理筋でした。
ここでは厚みを緩和するために▲2六歩と突いておき、場合によっては▲1八香車~▲1九飛車、▲2七金~3八金の駒の繰り替えを目指して良い勝負だったと思います。
9,7筋だけでなく4,3筋も突いて戦線拡大をしてきた局面。
ここから△5三角 ▲3六銀 △4四金
▲3四歩 △3五歩 ▲4七銀 △3四金と上手く対応し、より強固な厚みを確立することができはっきり優勢になりました。
以下は △4二飛と飛車も活用でき、厚みを活かして攻め切ることができました。
予想通りかなり厳しいブロックではありましたが、なんとか抜けられて一安心しました。
本戦一回戦は東海の方。
戦型はお相手のゴキ中に対して超速。
超速銀対抗の形は、振り飛車に△6四歩、△1二香車や△6三銀などの有効手がなくなって損な手待ちしかなくなった状態を待ってから居飛車が仕掛けるのですが、そのタイミングが何か所かあり、しかもその間の居飛車の手待ちの仕方も何個かあって、更にどれも同じくらい有力なので悩ましいです。
また、仕掛けても振り飛車の玉が深く、一回ミスするだけで勝ちにくい将棋になってしまうので評価値以上に難しい将棋の印象があります。
本譜は、▲6八金寄~▲7七角と固めておき、△6三銀と離れ駒が出来た瞬間に仕掛けました。
今、▲3三歩に△同 銀と取った局面。銀を取るのは味消しとみて、▲5五銀左としたのですが△3四銀をうっかりしておりやや不利に。
こういう展開になると途端に振り飛車が勝ちやすい将棋になるのがこの戦型の悩みどころですね。
必死に動いたものの形勢が悪化して苦しい下図。本譜は△3三金と角を働かせに来たのですが金桂交換となり互角近くまで戻りました。
ここはじっと△7四歩!と指して▲7五桂の傷を消しつつ、△7三桂や△6五歩を狙われたら手も足も出なかったと思います。
駒が綺麗に捌けて優勢になった下図。
ここで▲5七歩と指したのですがこれが悪手で、△2六飛車と回られて飛車成りの先手で損になりました。
ここは▲6七銀と5八の金に紐をつけながら受けるのが好手で、今度△2六飛車なら▲7五桂馬が厳しいです。▲6七銀に飛車を切られて△4八金を気にしていましたが、7筋の金がいる耐久力を活かして、両取り逃げるべからずで▲7五桂馬がやはり厳しく優勢でした。
少し進んだ局面。時間切迫で相手の攻めにミスが出てしまい再び優勢に。
ここで図の▲6八銀打ちが決め手の受け。自陣が鉄壁になり以下は着実な攻めで勝ち。中盤はかなり苦しかったので勝てたのは幸運でした。
本戦二回戦は関東の方。
戦型はお相手のゴキ中にこちらの超速。
先ほどと同じ戦型ですが今度は振り飛車側は穴熊に潜っています。
この形を相手する場合、居飛車が先手の場合は相手の穴熊が未完成なので端歩も省略して速攻を仕掛け、後手の場合は端歩を突き越して△4二金寄~△3三角と整備しつつ振り飛車の有効手が消えたタイミングで仕掛ける方針で指しています。
よってその方針に則って、本譜は▲4五桂と仕掛けたのですが厳密には▲4五銀のほうが良かったようです。
▲4五銀以下は△同 銀 ▲同 桂 △4二角 ▲5三銀 △同 角
▲同桂成 △同 飛 ▲2四飛が一例で居飛車良し。
ただ上記変化もですが、速攻を仕掛ける形は、居飛車の陣形がかなり薄く、攻めも軽いため、未完成とはいえ遠い穴熊を活かされて、少し無理な攻めを通される懸念もあります。なので負けにくいのは後手番のようにじっくり陣形整備をしてから仕掛けるほうかもしれません。
本譜は仕掛けがうまくいき優勢になったのですが、下図で△7四歩?▲6三桂成 △7五歩!が面白い勝負手。
何もしなくても桂馬を成れるところで催促するのが面白い手で飛車は取られてしまいますが、飛車を取ると4一の金が玉に引きつけられます。
また、7筋の歩が攻めに絡み、角を9五に使う味もあって二枚の銀の働きが薄い現状では実戦的にはかなり嫌でした。
優勢を保ったまま進んだこの局面。
自玉の頭から攻められており、桂馬も密集していてクラクラする局面ですが、▲9八飛車!と自陣飛車を打ったのが読みを入れた手で、受けきり勝ちを狙えると思っていました。
その判断は間違ってなかったのですが・・・今見ると▲6八金上のほうが自然だったかもしれません。
少し進んで、事前の読み通り▲9六歩と指したのですが、これがとんでもない悪手。
△6二角と引かれたら一気に敗勢になっていました。▲6二同馬は△同金で玉を固めさせるだけでなく、7七の地点の効きが消えますし、かといって馬を逃げると飛車を取られて△7五桂で終わってしまいます。5六の銀が質駒なのも痛いです。
対局中は全く気付いてなかったので表情も変わらなかったのですがもし気づいていたら雰囲気で相手にもバレていたかもしれません。
実戦は銀を取って8八の地点で精算するこれまた読み通り?の手順に進んではっきり受け切り勝ちに。一瞬の逆転劇もありえた内容だったので反省の一局でした。
いよいよベスト8。お相手は関西の方。同じ研究会に所属しており、練習将棋も含めてこれまで一度も勝てたことのない相手。
戦型はこちらの三間飛車穴熊にお相手の左美濃。
このタイミングでの▲3五歩はかなり珍しい仕掛け。
3筋は軽くかわす方針で6筋から反撃。△6六歩は逃げたら△7五歩や△7三桂を狙っています。
本譜は金で取ってきましたが、△4五金と駒得を主張する将棋に。歩切れで駒効率もよくなかったので自信はなかったのですがペースは掴めていたようでした。
終盤の入り口。
△6二銀と受けたのですがこれが疑問手で、△5五歩が相手の二枚の角の働きを止めつつ、△5六金も狙った効果の高い一手でそれなら優勢でした。
本譜は△6二銀へ▲9五歩が厳しい端攻めで不利に。
下図は8四角と打ったところ。▲9三香成に△6六角、▲7七銀打 △9三角引と駒を補充しながら受けられたのですが、冷静に角を取られて▲2一飛成とされると居飛車の玉への攻めの手掛かりが何もなくてやはり苦しいです。
時間切迫で悩みながら△8四銀と先受けをしたのですがここからの手順が好手順でした。
▲8五歩! △同 銀 ▲8四歩!
急所の玉頭を最も安い歩で崩しに行く本筋の手順で、これで負けを悟りました。
以下は攻めたものの駒にまとまりのない穴熊は顔の濡れたアンパンマンと同じで全力の攻めが出来ない形。しっかり余されて負けに。
お相手とは、いつも最終盤に入る前に悪くなって勝負形を作れずにいるので、次戦うときはもっと良い勝負をしたいです。
大会後
大会後は会場近くで大学将棋の友人たちとご飯へ。負けて凹んでても仲のいい人達と将棋の話をしながら美味しいご飯を食べるのはやっぱり楽しくて元気が出ました。
久しぶりに名古屋に来たので新幹線に乗る前に、お土産に赤福や小倉トーストラングドシャ、ういろうなどを買うことに。会計後のレシートを見てみると金額の合計がかなり大きく、金額ミスを疑ったのですが、しっかり全部身に覚えがあるもので、金額もバッチリあってました(笑)今度はぴよりんとかも買ってみたいですね。
まとめ
レベルの高い予選でいつも通り?安定した結果を出せたのはよかったですが、代表はやはり取れず。
激動の10月もこれで終わり、残り出られる予選は山陽と近畿のみ。果たしてどうなるか?
今回の戦績
ベスト8(今年2回目)
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