良い手は指が覚えている
お久しぶりです。時間に余裕が出来たので記事投稿します。今回は本ブログ初の自戦記です。
また、他の記事を見る際にもですが、有段者くらいまでの方でしたら実際に盤駒を出して並べながら勉強することをお勧めします。本、ブログ、YouTubeなど「視覚」や「聴覚」が優位な勉強法が主流ですが、自身の手足を使って「触覚」も駆使して勉強するとより身につくと思います。
これは他の勉強でもいえると思います(漢字ドリルや計算問題など)
コロナ禍になって
初手から
▲2六歩 △3四歩 ▲2五歩 △3三角 ▲7六歩 △4四歩
▲4八銀 △9四歩 ▲9六歩 △3二飛 ▲6八玉 △4二銀
▲7八玉 △6二玉 ▲7七角 △5四歩 ▲8六歩 △7二玉
▲8八銀 △8二玉 ▲8七銀 △5三銀 ▲5八金右 △9二香
▲9八香 △9一玉 ▲8八玉 △8二銀 ▲9九玉 △5一金左
▲5六歩 △7一金 ▲5七銀 △6一金左 ▲7八金 △7四歩
▲6六銀 △6四銀 ▲6八金右(第1図)
こちらは県大会での将棋。相手は学生の方。コロナ禍になり早2年。県では大人ではなく大学生以下の学生の活躍が目立つようになりました。
将棋を学習できる環境がひと昔前より整っていることもそうですが、数々の一般大会が中止を余儀なくされる中、学生大会は比較的開催されていたので彼らは真剣勝負で経験を積むことが出来ていたのが大きな要因だと分析しています。
どんなに経験を積んだ玄人も定期的に技を研ぎ澄まされなければ錆びてしまう一方ということなのでしょう。
さて、この局面では△7二金左と固めるのが自然ですが、持ち時間20分30秒の早指しということもあり、本譜は積極的に行きました。
柔軟な飛車
第1図から
△7二飛 ▲8八金 △7五歩
▲同 歩 △同 銀 ▲同 銀 △同 飛 ▲7六歩(第2図)
ここで飛車をどこに移動させるか。普通は△7二飛ですが・・・
自然な一手だが・・・
第2図から
△4五飛 ▲4六銀 △6五飛 ▲7八金右 △7二金左 ▲3六歩 △4五歩(第3図)
△4五飛が狙いの一手。実はこの局面は以前ブログで紹介したこの記事の類似局面。研究を事前にしていたおかげでここまでは1分程度の消費時間で済んでいたと思います。
▲5七金とする手には△7五歩と再度合わせるのが軽妙な手段。何もしなければ7筋を取り込んで△7五歩と拠点を作って△7六銀と打ち込めば、△5五歩の波状攻撃もあり居飛車大変です。
また、素直に▲同歩、△同飛なら囲いを薄くさせながら、7筋に飛車を帰還させられるのでこちらも形勢互角ながら振り飛車勝ちやすい将棋になります。
ということで▲4六銀と銀を打つのが囲いを崩さずに4七の地点を受ける1手になりますが、こちらの飛車は狭いものの銀を手放させておいて振り飛車も楽しみの多い展開です。
その後、自陣整備が完了し、▲3六歩と突いてきました。自然な一手でしたがこれが敗因に近い一着なので将棋は難しいです。
ここは▲5七銀と引けば以下▲6六銀、△4五飛、▲4六銀、△4五飛の千日手になる可能性が高かったです。本譜は△4五歩が厳しい一手になりました。
4枚目の攻め駒の存在
第3図から
▲5七銀 △7七角成 ▲同 桂 △3九角 ▲6五桂 △2八角成(第4図)
△3九角の飛車銀両取りから勢いのまま飛車交換をしてもらい、一気に勝勢に。△3九角に対しては
- ▲3八飛
- ▲5八飛
- ▲1八飛の三つが考えられましたが
▲3八飛には △5七角成 ▲6五桂 △5六馬 ▲5三桂成 △4六歩(変化図1)
▲5八飛には △4六歩 ▲6五桂 △4七歩成 ▲1八飛 △5七角成
▲4四角 △2七銀(変化図2)
▲1八飛には △5七角成 ▲6五桂 △4六歩(変化図3)でどの変化も優勢になります。
どの変化でも△4六歩が急所の一手になっています。
盤上の馬+手駒の銀2枚だけでなく、4五の歩や手駒の歩を攻め駒として活用させる「4枚の攻めは切れない」の格言に沿った本筋の一手です。
第4図から
▲6八銀 △4九飛 ▲8九角 △6四馬 (途中図)
先を見通せるか
▲6八銀 に対して実戦ではある程度時間を使いました。この局面自体ははっきり勝勢ですが、どんなに優勢になってもここで腰を落としてしっかりとした指針を定めなければ将棋は簡単に逆転してしまいます。こちらの懸念点は
- △7四歩がないため、▲7五香や▲7四桂が厳しい
- ▲3七角の攻防手
- 桂香を先に拾われてしまうと▲8九桂(香)と形良く修復される、が挙げられます。
初段くらいの有段者の方(特に若い方)でも優勢なことに楽観してか、相手の早指しに呼応してか、こういった局面で1九馬~2九馬とされる方もよく見かけます。ただ、この場合これは最も悪い手順。
- 急所のラインの馬を逸らしながら効率の悪い桂香の拾い方
- 更に相手に4一飛~2一飛成から修復用の桂香を取る手や
- 5三に急所の桂を成らせる手を許す、三重の悪手。
そのため、まず先に△4九飛と王手をして合い駒請求を含みに相手の手を打診します。
▲8九飛ならこちらの玉に攻めが来なくなり△4七飛成から△5五歩と攻めます。
▲8九金なら先に6四馬と引いて5三桂成を消しつつ8六の地点を睨んで味が良いです。
本譜は▲8九角ですが、これで余りにもつらい受け。
それに対して直ぐに△2九飛成と取らずに一度△6四馬と引くのが勝率を高める1手。無条件に桂を取らせてしまっては負けなので▲6六歩ですが、そこでようやく△2九飛と桂を拾います。
対抗形の終盤戦は効率の良い桂香の拾い方が大切です。ただ駒を拾う手にも良し悪しがあるのです。本譜の場合だと馬は自陣に引き付けて、桂香を取らせるのを龍に任せるのが駒を補充しながら敵陣に迫れる最も効率のいい手順でした。
桂香は金銀の原石
途中図から
▲6六歩 △2九飛成 ▲5一飛 △3三桂 (途中図2)
△3三桂も大事な1手。なおも▲4三飛成と取りに来たら△2五桂と逃げておきます。
何度も言いますが、対抗形の終盤戦は如何に相手の桂香を効率良く拾って先に良い地点に設置できるか、逆に相手に効率の悪い取らせ方をして手を稼ぐかが非常に大切です。
取られた桂香で守り駒を剝がされてしまっては、結局守り駒をタダで渡したのと同義になるからです。
寄せの構図の実現
途中図2から
▲1一飛成 △1九龍 ▲1三龍(第5図)
▲1三龍と緩んで来ました。ここで終盤の入り口の▲6八銀のところで考えていた寄せの構図を実現させます。ポイントは「良い地点に桂香を配置して相手の金銀を剥がす」です。
決断の馬切り
第5図から
△8四香 ▲7七銀 △7四桂 ▲7五香 △同 馬(第6図)
△7五同馬の際に再度時間を使い、詰みの展開まで読みを入れて指しました。というのも馬を切ってしまうと前途したように振り飛車側の懸念点として▲3七角の攻防手があるので、気持ちよく攻めているようでも注意が必要です。
わらしべ長者メソッド
第6図から
▲同 歩 △8六桂
▲同銀右 △同 香 ▲同 銀 △7六香 ▲7七香 △同香成
▲同 銀 △6九銀 ▲7四桂 △7六歩 ▲同 銀 △7八銀成
▲同 金 △7七歩 ▲同 金 △6八銀 ▲8八銀 △7七銀成
▲同 銀 △7八金 以下数手で後手の勝ち(終局図)
△8六桂馬からは溜めてきた力を持ち駒達と共に爆発させるターン。
とにかく桂香歩の守りの修復に効かない安い駒で銀を入手して、その銀で金を剥がして囲いの数と連結を断つ「わらしべ長者メソッド」で攻めていきます。
ただ、今見ると△7六香 ▲7七香 △同香成 ▲同 銀 は8六の銀を守りに使わせて少し損だったかもしれません。とはいえ、変化もしにくい展開となり終局図は綺麗な受けなしで終わってみれば完勝の一局となりました
終わりに
初めての自戦記ということで一番好きな戦型をチョイスしてみました。次回は私のもう一つのエース戦法の将棋を紹介したいと思います。乞うご期待を。
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