大会前
北東北予選から一週間後。今年も去年同様に12時受付&13時開始なのでのんびり会場へ向かいます。
会場に着いてみると、やはり去年同様にかなりの参加人数。
明日が祝日で、今年最後の予選である加古川でアマ王将近畿予選があるからか、関東からのアマ強豪の方が多くいました。
大会
山陽大会の参加人数は72名前後。トーナメント形式で、持ち時間は20-30でした。
一回戦の相手は山陽の方。戦型はお相手の後手△4四歩からの矢倉にこちらの居角左美濃急戦。
お相手とは新年頃の大会で初めて当たっており、これでこの年二度目の対局。対抗形を好まれている印象でしたが、前回はお相手の振り飛車対こちらの居飛車で、序盤からこちらが上手く指せて勝ったので作戦を変えてきたのかも知れません。

図は飛車先交換をして△8五に飛車を引いた局面。対して▲6六角や▲9六歩と自玉に手を入れるのも自然ですが、後手の駒組みは如何にも何か隙がありそうな形。
先手番の居飛車はシンプルに自然に、棋理に則って指せば悪くならないという(特に二手目△3四歩系統の変化球の将棋では。)のが私の信条。
よって、▲4五歩△同 歩▲3五歩と仕掛けました。以下△同 歩だと、▲4五桂 △3四銀 に▲2二角成 △同 金 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △2三歩 に▲3四飛と飛車を切って △同 金 に▲6一角。

これは矢倉側の飛車と玉の位置が中途半端すぎて受けがなく勝勢です。そのため、本譜は▲3五歩を取らずに△4六歩と変化してきました。

自然に攻めてリードを奪った中盤戦。ここで▲6八金寄も非常に有力ですが、本譜は軽妙な攻めを選びました。
ここで▲3三歩成! △同 角 ▲4五桂 △4四角 ▲5二銀!

拠点に見える▲3四歩を成り捨てるのが少し見えにくい好手。△同金直だと、そこで▲6八金寄とかわしておけば角道が止まったので今度は▲5五飛や角が生じています。
よって△同 角ですが、▲4五桂の角取りから▲5二銀が激痛。
△同玉は▲3二飛成があるので本譜は△4二玉とかわしましたが、それでも▲3二飛成と飛車を切って、▲4七金と質駒だった銀を取るのが絶好に。

こちらの玉は壁角ですがまだまだ堅く、対して後手玉は▲4一銀打や▲3三歩があり一手一手。実戦はこの後は手堅く寄せて勝利。自身の信条に基づいて上手く指せた一局でした。
二回戦の方は関東の方。ハイレベルな都市部でしばしば代表を獲得しており、非常に手強い相手だと思っていました。
戦型はこちらの後手三間飛車穴熊で相穴熊。

この局面は一つの分岐点でこの記事で紹介したように△7四歩もあります。ただ、その後の研究で少し自信のない変化があったのと、今回は試したい手を指すために△7二金左と上がりました。

この局面もまた一つの分岐点。こっちの記事で紹介した変化に合流するために△4五歩もあります。ただ、やはりその後の研究で少し自信のない変化があったのと、今回は試したい手を指すために△7四歩としました。(2回目)

居飛車の▲2四歩の仕掛けを受けて立った局面。評価値的には-300~400ほど。肌感としてもそのくらいの苦しさを感じる局面でもあります。
ただ、この形をそれでも指すのはこの後に居飛車が正確に指し続けるのはかなり難しいと思っており、居飛車がミスした途端にむしろ振り飛車が勝ちやすいと感じているからです。この辺りは後手ゴキ中対超速の銀対抗の事情と似たようなところを感じています。
実戦はここで△1四歩と突きました。端を受けてもらうと少し得をすると見ており、その瞬間にとある面白い手を指してみたかったのですが・・・
この辺りもいずれ電子書籍で出す予定の三間飛車穴熊の本の第三~四巻で解説したいですね。(本当にいつになるんでしょうか)

本譜は△1四歩に▲3三角成 △同 桂 ▲2四歩 △2六歩と進行。
ここで▲5一角 △2四飛 ▲3三角成 △2七歩成▲2四馬(▲6八飛なら△2六飛▲4四馬に△3五角で失敗)△2八とならやはり悪かったと思います。

この変化はと金を作ったものの、先に桂損をして馬を作られているのは大きいです。

実戦は△2六歩 ▲同 飛 △3五角 ▲2三歩成 △2六角 ▲2二と △3五角と進行。二回の△3五角がこの形で頻出する良い手で、これは互角の範疇の将棋に。

ノータイムで△2八飛とおろした局面。ここで▲2一飛と合わせられて10分近い長考に沈むことに。△同飛成▲同 とと進むよりないですが、再度△2八飛と打っても▲2二飛と合わせられてと金を働かせられそうです。
その変化は損だと判断し、△5九飛と打ち場所を変えたのですが、これがかなりまずい手だったようでした。実戦は▲2二飛と打たれて▲2九の桂に紐をつけられ攻め駒不足が顕著になってしまい、はっきり不利に。

最善は、再度△2八飛と打ち▲2二飛△同飛成 ▲同 と △2八飛 ▲2三飛 △2五桂!
桂馬は△4五桂と捌いて使うことばかり考えており、最後の△2五桂が思いつかなかった手でした。確かにこちらの桂の働きは悪いですが、▲2三飛が中途半端な格好で働くまで時間がかかるので釣り合いは十分とれていました。

苦しいまま進んだ終盤戦。残った持ち時間を使って勝負する順を考えて、△5五歩と指しました。
以下、▲同 歩に △1三角が不思議な手で、飛車が2筋から逸れたら△2九飛成と駒を補充することができます。よって ▲2八飛成としますが、そこで △7九角成 ▲同 金 △5六金と必死の食いつきに。

竜を自陣に戻させることで攻めは遠のきさせ、△6七金や△5七桂成を見せて焦らせる勝負手順ですが、現実問題として自陣竜の守りは強く、やはりはっきり苦しいです。

いよいよ最終盤戦。ここで銀取りを放置した△5六角といった勝負手はあったかもしれません。
実戦は△6二銀と引いて辛抱し、チャンスを伺います。

少し進んだ局面。ここで△7二金と受けに回りましたがこれが敗着に。△6六金と銀をとるのが最後の勝負手でした。
上部に追われた際に要の駒となる銀を外しつつ、△8九角成の頓死筋を見せる攻防手。そこでじっと▲6九歩と受けられるとやはりまだ大変なようですが、秒読みの中でチャンスがあったかもしれません。
実戦は居飛車がZでこちらの詰めろがほどけなく幾ばくもなく負けに。
自然に指されて苦しくなるのは後手番の振り飛車(特に振り穴)では仕方ないのですが、終盤の入口の要所や最終盤での一瞬の切れ味を出すことが出来ずに内容の良くない一局でした。
ここ5~6年ほど居飛車を採用することがかなり多くなり、あまり振り飛車を指さなくなったことで、以前は常に発揮できていた振り飛車らしさを少しずつ失っているような気がしています。
振り穴名局集のインタビューで福崎九段がタイトル獲得後に、振り穴の採用率が減ったことに関して「大きな勝負以外で使うのがもったいないと思っていたが、次に使おうとしていたら腕が錆びついていた。微妙な感覚を忘れていていて、そういった感覚は持ち越せないということを知った」という趣旨の回答をしていたことを正に思い出しました。
私は、すべての戦法をそれぞれの作戦の持ち味を十二分に引き出した上で指しこなしたいと思っているのですが・・・「彼方立てれば此方が立たぬ」で難しいですね。
大会後
早々と負けてしまい、本当はその後の敗者交流戦にも参加したかったのですが、翌日の近畿予選に備えるために参加をお断りして早めに休むことに。
いよいよ次が2024最後のアマ王将予選。果たしてどんな結末が待っているのか。
今回の戦績
ベスト32
近畿編へ続く
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