アマ王将巡り⑨ 11/4 山陽編

大会

大会前

東海予選から一週間後。今回は広島の将棋ひろばさんが会場。ひろばさんが会場の場合、12時受付13時開始が恒例なのでのんびり電車で向かうことに。ただ、終わりの時間がかなり遅くなることが悩ましいところでもあります。

会場に着いてみると、かなりの参加人数、そしてアマ強豪の方がいました。コロナ以前にも山陽大会には何度か参加したことがあったのですが、例年以上に熱気がありました。

さて、知り合いと話していると、自分がアマ王将巡りで全国各地に行き毎回ベスト4付近で負けていることが他地区で噂になっていると言われました(苦笑)怪しい人ではないので、仲良くしてくださいと伝えておきました。

大会

山陽大会の参加人数は64名前後。トーナメント形式で、持ち時間は20-30でした。

一回戦のお相手は山陽の方。ここ最近色んな大会で当たる方です。

戦型は私の三間飛車穴熊にお相手の居飛車穴熊。

下図はこの記事でもほぼ同じ形を解説しています。本譜は▲6八角 △6四歩と無難な進行でした。

ただ、上記でも有力としていた▲6五歩と突く手がやはり一番嫌な手。△6四歩からの反発も居飛車から見たら気になるので実戦的には突きにくい歩だと思いますが、正しく指し続けられたら、厳密には▲6五歩で居飛車ペースかもしれません。

△6四銀型への▲6六歩型の急所はチャンスがあれば兎にも角にも▲6五歩だと思うので居飛車党の方は覚えておいて損はないと思います。

少し進んで中盤戦。6筋の突き捨てから▲8六角と馬を作る手を狙ってきましたが、そこで受けずに△4五桂が気持ちのいい捌き。▲3一角成には△3七桂成らずを用意しています。

本譜は桂馬を取って2筋の突き捨てを入れて馬を作ってきましたが、そこで△4四角が絶好の一手でやや有利に。何もしなければ△6二飛車があります。

こうなると6筋の突き捨てがこちらの攻めの拠点になっているのが痛いところです。

よって飛車を取って▲5二飛と打ってきましたが、△8八角成!が穴熊らしいスパーク。

▲同 銀に△6六桂で角銀桂の三枚の攻めでかなり細いですが、自玉が鉄壁なので十分成立しています。

終盤戦。6七の金で6六の桂馬を外したところ。この手が敗着となりました。代えて▲5七金と寄っておけばかなり難しかったと思います。

本譜は△8九銀成!▲同 飛 △6六歩ではっきり優勢に。

銀桂交換の駒損ですが、穴熊の8九の桂はZを保つうえでの大事な守備駒なので、それを剥がすことは駒の損得以上の価値があります。

最終盤。二枚目の馬ができそうでまだ堅そうな先手陣ですが、ここで△7五歩が筋。七筋に歩が使えれば持ち駒の桂香の使い道がグンと広がります。

以下は堅さを活かして一手勝ち。初戦から良い将棋を指してスタートダッシュを切ることができました。

二回戦のお相手は山陽の方。こちらもここ最近色んな大会で当たる方です。

戦型は私の先手雁木にお相手の早繰り銀。

今、▲6五歩と突いた局面。少し指しにくいですが、△5五銀と交わされると互角でした。

本譜は△同 銀でしたが、▲3三角成 △同 桂に▲3五歩が急所を突いた攻めで早くも先手ペースに。

終盤戦。△8六角と出たところ。ここで▲5五角が味のいい攻防の角。以下、△6四角に▲4四角で要の4五の桂も取れそうになりはっきり優勢になりました。

図の▲8五香車が決め手。飛車を攻められ始めると敵陣は持ちません。以下は手堅くまとめて勝利。

三回戦のお相手は関東の方。局後に話したところ、最近まで奨励会に在籍されていたとのこと。

戦型はお相手の三手目角交換による先手一手損角換わり。アマ大会では使い手が一定数いる指し方で、後手番になっただけで損に見えますが、

  1. 飛車先保留で代わりに4筋の位を取りやすい。また早繰り銀などの速攻にも対応しやすい。
  2. 確実に自分の土俵に持っていける

というメリットがあり棋理としての先手の得は消えていますが、戦術面での得はそれと同じくらい大きく残っています。

さて、下図は序盤の駒組みの岐路。△5四銀から△3一玉が自然で、最善の駒組みだと思います。

ただ、いつでも▲4六角から牽制され、攻め間違えると攻め駒を責められる展開で負けることが練習将棋で多かったので、今回は安全志向で△5四歩から玉を引っ越して右玉へ。

駒組みが進んで下図。早めに2筋の交換をさせているのはややミス。ここから△5二金~△6二金と千日手歓迎の姿勢で待機策を選びましたが、これがどうだったか。相手に穴熊に潜られて短い持ち時間では勝ちにくい将棋に。

積極策は直ぐに△3三桂と跳ねて4筋の歩を交換しながら、穴熊に組もうしたら反発する含みを残しておく順で、こちらのほうがまだよかったです。この辺りは経験が少ない形で手探り状態でした。

実戦は懸念通りに、穴熊からの攻めを食らうことに。ここでは△8六歩と少しでも嫌味をつけておくのが絶対手でした。

本譜は▲7三角成や▲6五桂も怖がって、△6四角と受けたのですがこれが火に油を注ぐ悪手。万全の状態で相手の飛車角銀桂を全て捌かせてしまい一気に敗勢に。

粘って少しでも嫌味をつけようとした下図。ここは単に同金や同竜のほうが手段が乏しくて困っていました。

本譜は▲6二銀成と銀を渡したのちに竜を引き付けてきたので△8五銀と攻めの拠点として銀を打つことができて、悪いなりにも主張が出来てきました。

段々ともつれてきたところ。ここで▲5六歩と馬取りと▲5五桂と打つ拠点をつくる狙いで突いてきたのですが、これが善悪微妙だったようでした。

△4六馬と好位置に馬を引けて、以下▲5五桂に△同 銀 ▲同 歩 △5二金左と遊んでいた金を味よく受けに使えてはっきり逆転しました。

最後は△6七歩成と上部を厚くしながら攻めることができて勝ち。経験の少ない将棋で、かなり苦しい内容でしたが、逆転勝ち出来たのは大きな自信になりました。

四回戦のお相手は山陽の方。比較的世代の近い知り合いの方で、練習将棋は指したことあるのですが、公式戦は初めてなので当たるのを楽しみにしていました。

戦型はお相手の4手目3二飛車戦法

図の▲7七角は10年以上前に流行った4手目3三角戦法の対策で採用されていた手。堀口弘治八段が指された手なので「堀口流自陣角」と将棋世界で紹介されていた記憶があります。

狙いは相手の金銀の進出を牽制しながら、▲3六歩~▲3七銀~▲4六銀と桂頭を攻めること。それを防いで△4四角と打つと▲6六歩と角道を止めて、角の圧迫や居飛車穴熊に組むことで作戦勝ちを目指します。

・・・ただ、この対局以降に振り飛車側を持って△4四角と打つ将棋を指したのですが、振り飛車も穴熊に組んでみると桂頭に不安はあるものの通常の振り飛車穴熊よりも得をした形で勝率も悪くなかったです。

ただそのあと色々調べたところ、居飛車側は藤井(聡)ー久保戦(敬称略、2021年7月、B級順位戦)のように4八銀を保留して速攻を見せつつ、駒組みになる場合は▲5六歩~▲5七銀~▲4六銀ルートで桂頭を狙うのが改善策で、こうされると振り飛車穴熊+4四角の形には組みにくいです。

このあたりの真意は不明ですが、藤井聡太先生の作戦はやはり秀逸だなと舌を巻きました。

さて、話を本局に戻します。お互いに美濃に組んだ後にやはり△4四角と打ってきました。

しかし、この場合は▲6六歩と止めて、囲いの性能がほぼ同じで、桂頭攻めや6筋の位を取る手が残っており狙い通りの作戦勝ちに。

図は振り飛車が銀冠に組もうとしたところ。ここは「離れ駒に手あり」の格言通りに▲3五歩で有利でした。

△4五歩の反発を気にしましたが3筋の歩を取り込んで▲5七銀と引いておけば、相手の金銀はバラバラで、▲5五歩も残っていて十分な展開でした。

本譜はこちらも銀冠に組んでから同じ筋を考えていたのですが、素朴に△7四歩と突かれて△7三角の牽制を用意されて予定変更せざるを得なくなりました。

▲5九角~▲3七角や4六の銀を5七から6六へ繰り替ればまだ模様の良さが残っていたのですが、▲6六角?に△4五歩、▲3七銀とされて銀の働きが悪くなり、模様が悪い展開になりました。

軽快に捌かれてやや苦しかったですが、図から▲7五歩が待望の反撃。玉頭方面の勢力はこちらが大きいので後手としても嫌な手です。

かなり形勢を持ち直し、終盤戦に突入したのですが、図の自然な▲8九桂の補強が負けていたら敗着の一手。

少し進んだ局面で、ここで△7九金!と打つ絶妙手がありました。次に△8九金があるので▲同金の一手ですが、△6七飛車成りが角銀両取りで収拾がつきません。これがあったので▲7九桂とこちらから打たないといけませんでした。

実戦は△5七歩成の成り捨てから△5五角と出てきましたが、▲5八銀右と遊んでいた銀が受けに使えて悪いながらも流れがこちらに来ていました。

いつの間にか自陣がまとまってきて、形勢好転を感じさせる下図。△5七金から△3五角を狙っておけばまだ悪かったようですが、ここは急所が見えにくい形で指しにくい攻めのようでした。

実戦は、△7六歩を利かしてから△2九龍としましたが、▲4一飛成が薄い後手陣には厳しい一手で一気に優勢に。

こうなると中盤の▲7五歩も終盤の▲8九桂も活きてきます。以下は5筋にと金を作って押し切りました。

ベスト8のお相手は山陽の方。広島に遠征したら勝ち上がったところでほぼ毎回当たる方で、まだかなり若いですが県屈指のアマ強豪の一人。

戦型はこちらの先手三間飛車にへなちょこ急戦からの端玉銀冠へ。

図は6筋から仕掛けられたところ。ここで△6一飛車や4筋の歩を交換して△3三角と引くような手待ちだとこちらの指し手が難しく自信のない将棋でした。

実戦は△6五歩から角交換をして自陣に角を打ち合う展開になったのですが、こちらの▲4六角が攻防手としての価値が高く、▲2五歩と突いて一気に優勢に。

お相手の粘りに手を焼いていましたが、ここで面白い決め手がありました。

▲2三歩成り!が面白い手。

△同金は▲2四歩。△同玉は▲6四銀と香車を取れば▲2四香の一手詰めがありました。

持ち歩が少ない形でさっき打った玉頭拠点の歩を成り捨てる発想がなく、全く気づきませんでした。

最終盤戦。遊んでいた6~5筋の駒が捌けて後手にとっては夢のような展開。

ただここで▲2七香が自陣を補強しながら攻め味を見せた絶好手で踏みとどまることが出来ました。以下は2筋の拠点を活かして勝ち。

いよいよベスト4。私にとっての鬼門、何としても勝ちたいところ。

お相手は関東の方。9月の北陸大会の本戦三回戦で当たっていてその際は私が逆転勝ちをしています。

戦型はこちらの三間飛車に居飛車急戦。後手番ながら、対急戦にも欲張って穴熊に組むのを目指しました。

図の▲5五歩は手筋の仕掛けですが、△2二飛と寄られると空ぶった格好に。▲5四歩には角交換から王手飛車を決められてしまいます。

▲7九銀型の場合は王手飛車もなく、成立していた仕掛けなので一手早めにされたら居飛車十分な仕掛けでした。

桂得が確定して有利な下図。ただ図の▲6五角が妙に悩ましい手。▲8三角成を防ぐと、▲2四歩から▲2三歩~▲3二角成が気になります。

△4五歩、△8二銀、△6四歩、△7四角、△5六角などどれも有力そうなのですが、ここでかなりの持ち時間を消費しましたが手がわかりませんでした。

一番わかりやすかったのは△5六角と合わせる手だったと思います。角を取って打ち直せば△5五角が決まります。

また、△5六角にそれでも▲2四歩なら△6五角 ▲2三歩成 △3八角成!▲2五飛△1四角の好手順がありました。△3八角成が全く見えていなかったので選べない手順でした。

実戦は△4五歩と桂馬を取りましたが、やはり▲2四歩から▲2三歩~▲3二角成と攻められて、桂得ながら自玉が未完成な状態で自信のない展開に。

少し進んだ局面。ここで△5六歩としておけばまだ難しい将棋でした。

本譜は△3三桂 ▲2三飛成 △1四角とこの角に期待したのですが、この順を選んだことが敗着に。

▲2一龍 △3二角▲6一龍と構わず攻められると駒得ながら自玉が危険で駒効率が悪すぎて敗勢に。

図の▲4四金がこちらの陣形の不備を突いた厳しすぎる一手。

そこから猛追したのですがやはり差は大きく。最終盤で▲6六香車と打たれた局面。相手玉も△6九銀や角から王手は続きますが詰みません。

こうなると9筋の端歩を突いているのも先手の大きな得でまさに「勝ち将棋鬼のごとし」。

以下は詰まされて投了。北陸大会でのリベンジをされた格好となりました。

最後に三位決定戦があったのですがお相手の方が終電の関係で厳しいとのことで不戦勝で私が三位に。不戦勝とはいえ、これまでで一番高い順位になれたのはちょっと嬉しかったです。

大会後

大会後は三決をする予定だった相手と一緒に広島駅へ帰ることに。お互い終電ギリギリでしたが何とか間に合ってよかったです。帰りの間に色々将棋の話も出来て楽しかったです。

翌日、ひろばさんのXにアップされていた決勝戦の棋譜を見たのですが、とても夜遅い時間(20時過ぎ開始で22時前!に終了していたはず)に指した将棋とは思えないくらいの熱戦でした。

自分は準決勝を終えた時点で疲労困憊だったので将棋を指す体力が足りないことを痛感しました。

思えば大学時代は学生王座戦で40-60の将棋を1日3局朝から夕方まで指していたので、全国で勝ち上がるためにも、そのくらいの練習をして将棋体力向上に努める必要があるなと思いました。

まとめ

遂に5度目のベスト4。もはや笑うしかないですが、次の近畿大会が泣いても笑っても最後の大会。有終の美を飾れることはできるのか?

今回の戦績

ベスト4、三位(今年5回目)

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