大会前
北海道大会から一週間後。北東北大会の開催地である青森へ向かうことに。
北東北大会は隔年で開催場所が変わるようで、去年は岩手の北上市開催。今年は青森の青森駅前での開催です。
ところが、青森駅前の宿を取ろうとしたところ、何故か駅前のホテルが大会前日だけ高かったので、今回は青森駅から電車で30分程行ったところにある弘前で宿泊することに。
ちなみに青森を訪れるのは2度目で、2024年1月の冬の東北旅行で訪れています。
実は雪をこれまでほとんど見たことがなかったのですが、青森は山奥はもちろん、駅前周辺も他の東北の県に比べてものすごい量の雪が積もっていて、雪国の本場の凄さを感じました。


さて、大会前日の10/26。昼前に弘前駅に到着しました。
実はこの前に先週の北海道同様にかなり濃い青森旅行をしているのですが・・・やはり長くなりすぎるので今回は省略します。
まずは駅前にある「虹のマート」と呼ばれる地元のスーパーへ。色んな美味しい海鮮がお得に買えて驚きました。特に「いがめんち」と呼ばれる、イカを細かく刻んでミンチ状にした揚げ物が安くてとても美味しかったです。

腹ごしらえを済ませて、弘前城へ。天気が良かったこともあり、弘前城から見る岩木山の姿はとても美しかったです。



その後は、路線バスに乗って弘前市街の外れの岩木山方面へ。目的はりんご畑に囲まれたところにある「新岡温泉」というところ。ここは、私の好きな「モール泉」という植物由来の有機物が溶け出したお湯がウリで、いつか行ってみたいと思っていました。
道中に「羽黒神社」という霊泉と呼ばれる名水が湧き出る神社があったので立ち寄ることに。境内は厳かな雰囲気で涼しく、湧き水も疲れた体に染みて美味しかったです。
余談ですが、青森は結構湧水が飲めるところが多かったので湧水好きには嬉しかったです。

更に周りを歩いてみるとりんご畑もあちこちに点在していました。私はりんご畑をあまり見たことがなくてワクワクしたのですが、このあたりに住んでる方にとっては見慣れた光景なのでしょうね。

暫くするとバス停の看板を発見。見てみると本数が一日三便(!)。

そしてバスを降りてから歩き続けること3~40分で新岡温泉へ到着。温泉に入ってみたところ、モール泉の特徴でもある独特の甘い匂いがしており、お湯は薄い緑色で、湯量もものすごい。浴槽には不思議な黒い湯の花が沈殿しています。トロトロとした湯触りと気泡が滑らかに肌に付いて、入り心地は非常に気持ちよく素晴らしい温泉でした。

その後は弘前市内へ戻り、街並みを観光していたのですが、青森記念銀行や教会などレトロでおしゃれな建物が多かったです。
後で知ったのですが、弘前はフレンチ料理が有名とのこと。ぱっと聞くと意外な感じですが、こうして街を訪れてみると、なんとなく雰囲気に合っている気がして納得しました。

夜は海鮮居酒屋へ。「けんた食堂」さんという好きなYouTuberの方が紹介していた青森の郷土料理の貝焼き味噌を食べることに。貝焼き味噌はかなり塩っ気が強かったので、お酒や白ご飯が欲しくなる味でした。そのほかにも筋子巻や美味しい料理を食べて大満足の一日に。

大会
大会当日。お昼過ぎに大会会場に到着。会場の東奥日報社は最近出来たのかとても綺麗な建物。
今回の大会は青森県の将棋まつりと一緒に開催されているようで、森内九段、木村九段、行方九段が出演されていました。席上対局や大盤解説などもあり、非常に賑やかで楽しい雰囲気でした。
さて、北東北大会の参加人数は青森県内の参加者が26名、県外が12名の合計38名でした。ただ、県外勢は本戦からの出場で、県内勢の方は午前から予選リーグがあります(2勝通過2敗失格)。予選通過後に本戦トーナメントがあり、持ち時間は20分切れたら30秒でした。
本戦一回戦は北東北の方。戦型はこちらの後手三間飛車に棒銀。

棒銀に対しては様々な対策がありますが、今回は高美濃+△7三桂を採用。図から▲3五歩が最も自然な攻め。
以下、△2二角 ▲3四歩 △同 銀 ▲4五歩 △5五歩 ▲同 角 △4三銀 ▲3五銀 △6五桂でどうか。

△3六歩や△5四金の筋を見せながら戦っていき、これは難解な将棋だと思います。
実戦は△7三桂に▲3七銀?と待機策を取ってきて、こちらの隙を伺う展開に。

こちらが△5二銀と引いて4筋が手薄になったとみて▲4五歩と仕掛けられた局面。△4二飛 ▲4四歩 △同 飛! ▲4六歩 △6五歩が伸び伸びとした手順。

こうなると▲4四角と取ると△同角とした手が厳しい手になるため、リードをとれたと思いました。

△6五歩に▲9八香!と上がった手に対して△4五歩と合わせた局面。
これがこの将棋における形勢リードを拡大した好手でした。一見、▲同歩と取られて収められそうです。
しかし以下、△同 飛 ▲4六歩 △8八角成 ▲同 玉 △3三角 ▲7七角 △同角成 ▲同 金 △4二飛と進んでみると・・・

居飛車は▲8八玉と▲7七金を指せた格好ですが、△8五桂や△3三角のような手がより厳しくなっています。かと言って上図から▲8六歩と形を整えようとしても再度の△4五歩から△3三桂が軽快な捌きになります。
これは相手の力を利用して投げる振り飛車らしい手順で優勢です。

実戦は△4五歩に▲4八飛と対応してきましたが、△4六歩 ▲同銀右 △4三飛がやはり角交換を迫る厳しい手順。

▲2二角に対しての△4四角も振り飛車らしい角打ち。
香損をしますが、急所の位置に馬を作れるほうが大きいのです。

△8五桂は待望の一手で、△9八馬から駒損を回復する手や△7五歩~6四金~△7三飛と展開する手も含みにしています。

勝勢のまま迎えた終盤戦。ここで飛車を逃げずに△6四歩が受けの好手。
以下、▲5三桂成 △同 金 ▲3一馬 △5二銀。

飛車桂交換で大きな駒損になりましたが、少し働きの悪かった飛車を捌いて、同じく働きの薄かった△4三銀を守りに引き付けることができました。
また、何よりも△6五歩と急所の香車を狙いながらコビンを攻める狙いも残っているのが非常に大きいです。

少し進んだ局面。ここで△6七歩成と踏み込んで、▲同金右 △同 馬 ▲同 金 △6二香 ▲6六歩に△5五桂が厳しい攻めで決め手になりました。

馬は消えましたが、手順に攻防の△6二香を設置しつつ、最後の守り駒である▲6七金に狙いをつけた△5五桂が痛打で、大駒しか持っていない先手は粘りようがありません。
以下は手堅く寄せて勝利。終始振り飛車らしい手を指して勝ててよかったです。
本戦二回戦は北東北の方。人に聞いたところ、青森県内の大学に通っている学生のようです。
戦型はお相手の後手三間飛車にこちらの▲6六銀型の居飛車穴熊。
この居飛車の形は優秀で、実戦的にも非常に勝ちやすく、私は採用した時の勝率がかなり高い形です。

上図は駒組みが終わり、△8四角とけん制をしてきたところ。本譜は単に▲5五銀と出ましたが、ここは▲4六歩と突くのが本筋でした。
以下、△3三桂ならそこで▲5五銀と出ます。

次に▲4四銀のすりこみが非常に厳しく、単に▲5五銀と出るより効果的なのがわかります。
実戦は単に▲5五銀に対して△3六歩から飛車交換をしてきましたが、これはありがたく、ここからは形勢有利になりました。
代えて△5七角成 ▲6四銀 △同 銀 ▲1一角成を読んでいて、これなら互角だったと思います。

お互いに桂香を取り合った局面。ここで、▲5五桂が素朴ながら厳しい一手。
以下、△5四銀なら▲8六角 △6二香 ▲7五歩 △6五歩 ▲7七銀引。

細い攻めではありますが、自玉は鉄壁に近く、▲7五歩が急所を突いているためはっきり優勢です。

なおも優勢な終盤戦。ここで▲4三馬と寄ったのが悪手ではないものの、非常に筋の悪い手。
ここは「馬は自陣に」の格言通り▲7七馬が本筋でした。
以下、△7八銀成 ▲同 金 △7三桂(▲8五歩の防ぎ)には ▲7九香と守っておき、 △6九金
に▲7五歩がやはり厳しい攻め。

側面は△7一の桂が守っていて非常に堅いので馬を守りに使いつつ、玉頭を狙うのがはっきりした手順でした。本譜は側面から寄せることに固執してしまっていました。
北海道大会の1日目と2日目もですが、どうやら私は馬を自陣に引いて先受けする手を軽視しがちなようです。
これについてはちゃんと理由もあり、まだ今以上に受け偏重の棋風だったアマ級位者の頃、馬を自陣に引いて先受けをしたつもりが、その一手を相手にうまく利用されて、かえってその馬を狙われて攻めが加速したり、桂香を取られて攻め駒を補充されてむしろ損したりと痛い目を見ることが非常に多かったです。
そのため今でも、自陣に馬を引く場合は相手の攻めに対応して手順に、という将棋のつくりを無意識に選択しているということに気づきました。
今後の課題として、自陣に馬を引く手をただ指すことだけでなく、それ以上の攻めがないことを見越してじっと馬を引いて、確実な攻めを後から間に合わせる「正しい距離感」そのものを掴みたいですね。

さて、お互いに剝がしあった終盤戦。図の△7七桂!のタダ捨ては強烈な勝負手。▲同金と金を上ずらせて△6八馬などの攻めを効果的にしています。

図は△7九銀と絡みついてきた局面。本譜は▲同 金 △同 龍 ▲8八銀と受けました。
確かにこれでも優勢なのですが、以下△6八銀と更に絡みつかれます。こう見ると喰いつきを許してしまっており、中途半端な受けでした。
△7九銀に対しては、数を足して手厚く受けつつ、王手飛車を狙う▲9七角やZを作って一瞬の寄せを狙う▲8八歩がはっきり優りました。

更にここで▲7八金と引いたのも薄い受け方で、△同 龍から△7九銀打と迫られました。

△7一桂のおかげで妙に寄りづらい後手玉と、▲6一馬の質駒、そして王手飛車のラインとややこしい条件が増えています。優勢ながら秒読みの中、ここから大きな焦りを感じる展開となってしまいました。

自玉の薄さと詰み筋に思考を割かないといけなくなった終盤戦。ここははっきりしたチャンスが来ていました。
ここで平凡に▲7九銀と角を取り、△同銀不成に竜を切って、▲6三金!と打ち込んでおけば後手玉は詰んでいました。

▲6三金に△同玉は▲6一龍で簡単。よって△同桂ですが、そこで▲6一角と打ち、△8二玉に▲8三角成と捨てて、△同玉、▲8一龍、△8二歩に▲7二銀で詰んでいます。

局後に考えればそこまで難しくない詰みですが、▲6三金と桂馬の利きに打つ手が少し見えづらかったです。
また、他に有力な王手が多く、▲7四桂と跳ねられない制約など秒読みで迷う要素が多かったのが痛かったです。

実戦は△7九角に対して▲9七銀打?△同 金に▲7九銀と銀を一枚損をして角を取りました。
ここで△1一角と取られていたら敗勢でしたが、本譜は△同銀不成。この瞬間最大のチャンスが再び訪れました。銀を一枚損しましたが、やはり▲6三金以下、同じ入り方で後手玉は詰んでいるのです。

違いは△8二歩に対して▲8六香と打てる点。合い駒が高いこともあり、これでやはり後手は詰んでいます。

・・・本譜は竜を切った後、迷って▲7三香と打ちました。これで遂に負けに。
以下△同桂と取られて、その瞬間に▲6三金の筋に気づいて打ったのですが、後の祭り。

▲7三香△同桂の交換が入ったために▲6一角から▲8六香と同じ筋で攻めても△7三桂の利きが強く詰まなくなっています。
投了後、詰みを逃したことに気づき、かなりショックを受けました。
・・・ちなみに変化によっては▲7三香を打って詰ます筋もあったため、全く的外れな手順ではなかったことも余計にショックが大きかったです。
やはりもっと日頃から詰将棋をして、詰む詰まないの精度を高めないといけないと痛感した一局となりました。
ただ、お相手の粘り方と迫り方も参考になる将棋で、その後、この大会で強豪を倒して決勝まで勝ち進んでいったのも納得でした。
大会後
大会を早々と負けてしまったので会場の片付けをしていたところ、一緒に手伝ってくださった二人組の方に声をかけられました。
どうしたのかと思っていたら、なんと二人とも今回の大会に出場している私の知り合いの選手のお母さまだったことが判明。思わぬ出会いに驚き、何故か私のこともちゃんと(?)知っており、二重に驚きました。
片付けがひと段落した後、知り合いが決勝に進出したので、先ほど知り合ったお母さまに形勢判断を実況していたところ、何故かお菓子をもらうことに。
また、夜ご飯のために青森駅周辺の飲食店について伺うと、この周辺は店が早く閉まることを教えてくださり、実況のお礼に(?)地元のスーパーと宿泊するホテル送ってくださることに。
その節は本当にお世話になりました。ありがとうございます。
後日、地元のお土産を渡すように知り合いに託したのですが、もしまたお会いしたら直接お礼を伝えたいですね。
さて、この翌日以降も北海道同様に更に青森旅行を楽しんだのですが・・・やっぱりこちらも物凄い話が長くなるので割愛します。
北海道同様に東北も雰囲気が何となく好きなので、またいつか長期滞在したいですね。
今回の戦績
ベスト16
山陽編へ続く
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